踊り子の魔女 第七十五話:役割決定
偶然なのか、必然なのか。
トーカが合流したことで、示し合わせたわけでもないのにマリーのもとにみんなが集まった。
「あれ、みんな居るじゃん。どしたの。」
「昨日のスイーズ湖浄化作戦について聞きたいことがあって来たんだよ。」
「ああ、なるほど。」
「そうそう。手伝うからにはしっかり作戦を立てないとね。」
「手伝ってくれるの?」
「当然じゃない。マリーにはいつだって私がついてるからね。」
「ありがとうルル。」
「俺らも手伝うぜ!楽しそうじゃねえか古代の魔術を使うなんてよ。で、俺は何したらいいんだ?」
「俺も手伝う。力になるぜ。」
「僕ももちろん、マリーのためなら何でもやるよ。何でも言ってくれ。」
「やっぱりみんなやるよな。当然私も手伝うから。」
「みんな…。ありがとう。でもこの方法自体本にしか書いてないことで、熟知してやるわけじゃないから、危険が伴うかもしれない。…それでも本当に手伝ってくれるの?」
「あったりまえじゃない。みんなマリーのこと好きなのよ?困ってたら助けたいし。手を貸したいと思ってる。マリーだってこの中の誰かが困ってたら絶対助けるでしょ?それと同じよ。」
「ルル。」
うなずいたり、笑顔でこちらを見たり。それぞれがルルの言葉に静かに同意している。
『マリー。いい仲間を持ったわね。』
「うん。本当にみんなありがとう。」
「それじゃあ、浄化作戦成功のためにも、しっかりと計画を立てよう。まずは何が必要かを洗い出そう。」
「そうだな。まずはもしもの時の治療だな。そして私が治癒魔法が使えるからそれは私の仕事だ。」
「そんな誰かがケガすることを前提に考えたくないけど、そうね。事実必要だわ。」
「だな。他には、そうだな他は防御か。相手は魔獣の残り香だ、そう簡単にこちらから一方的に手を出せる相手じゃねえだろ。」
「うん。ラキアの言う通り。あっちが攻撃をしてくる可能性はとっても高いと思う。」
「だな。だとしたら、まあ当然この中で戦闘に特化してるのは俺とルルだろうから、俺とルルがその辺の攻撃に関しては対処するって感じになるんじゃないか。」
「そうね。それに遠距離攻撃も近距離攻撃もできるセドルも防御でいいんじゃない。」
「そうだね。ルルとゼスと一緒にマリーのことは必ず守るからね。」
セドルがマリーの左手をそっと持ち上げて、真剣なまなざしで見つめる。
「マリー私も、絶対にマリーを危険な目に遭わせたりしないから!」
ルルが右の手を取って、真剣な目でマリーを見つめる。
「あ、ありがとう二人とも。」
左手は暖かく、右手はやや痛い。
これは一体どういう状況なのか。
…。
ほんの少し沈黙が流れ、ラキアが話し出す。
「そうなると、俺は何すりゃいいんだよ。」
「実は、その、そもそもの話なんだけど。」
言いにくい話に私の言葉はよどみを帯びる。
「魔法陣なんだけど。私も当然使ったことないものだから、その、まだ、どう展開していいものか。そもそも複雑でちょっと構築できるのかどうかわからなくて…。」
「何だよ、早く言えよ。本はあんのか?俺にも見せてくれよ。」
「ラキアわかるの?!」
「まあな、青魔術師だぜ。なめんなって。ほら見せてみろよ。」
「ちょっと待って…。はい!」
ばんっ!分厚い本を勢いよく机に置いて図書館に音が響く。
「ご、ごめんなさい!」
人は少ししかいないが、周りの人に会釈しながら小声で謝罪を入れる。
「どれどれ。………、ふむ、なるほどな。」
みんなでラキアを見つめる。
「……。マリーこれは難しいな。」
「そうなの。どう?何かわかりそう?」
「……わからん。」
「わからねえのかよ。紛らわしい奴だな。」
ゼスがラキアの頭をはたく。
「いや、こりゃ無理だって。全部を解読すんのは難しいぜ。」
「だったらわかりそうな雰囲気を出すな。」
もう一発ゼスの頭に入る。
「あははは。」
突然後ろから笑い声がして、振り返る。
「セドル君。この間の君とルル君といい、君のお友達は本当に面白いね。」
「この間の話?ってなんだよセドル。」
「先輩!どうしてここに?」
「なあなあセドル。」
「なんでもない。」
「そう言わずにさぁ。」
「ラキア。もう一発頭にいれようか。行っておくけど僕はゼスみたいに優しくないよ。」
「……。」
表情が固まり、静かにうなずいてラキアは引き下がる。おそらくセドルが満面の笑顔だったのだろう。
「ははは。やっぱり面白い。」
「からかわないでくださいよ先輩。それで、なぜこちらに?」
「スイーズ湖の浄化の話を聞いてね。忙しいからスイーズ湖に実際に行って手伝っては上げられないけど、ここで色々教えてあげることはできるから、マリー君を探していたんだよ。そしたらなんと全員勢ぞろいってわけさ。」
「そういう事ですか。」
「先輩!色々教えてくれるんですか?」
「そのつもりだよ。セントリアーナ始まって以来の天才、オリハと並ぶといわれている私には、基本この学校にある本で分からないことはないよ。」
「オリハ?さん?」
「オリハ・ベーレ。セントリアーナ魔法学園一の天才魔術師。ってことくらいしか俺も知らないけどな。」
「マキエ先輩は、僕らが入学する前からオリハと並ぶって言われてるんだよ。だから力を貸してくださるなら、とてもありがたいです。」
「そう言ってくれるとありがたいよ。私としてもぜひこの面白そうな話に一枚かみたいと思っていたからね。」
「それで、マキエ先輩はこの魔法陣について何かご存じですの?」
トーカの一言で、みんなの目線がマキエ先輩に集中する。
「当然。そもそもマリーにこの本を教えたのは私だからね。魔法陣についてはしっかり教えてあげるし、実際練習で展開もしてみよう。」
「本当ですか!ありがとうございます!!」
「いいんだよ。私も楽しみとして協力するんだから。それでだけど、陣は二つある。一人で展開でもいいけど、二人でやる方がいいと思うんだ。」
「確かに本には二つの魔法陣について書いてありました。やっぱり二人で一つずつ作ったほうがいいんですね。」
「そうだね。安定させるためにも一つを一人が確実に安定させて維持したほうが安全だね。」
「わかりました。じゃあ、私ともう一人が魔法陣担当ってことですね。」
「そう。精密な魔力の操作が必要なんだ。マリーが作る浄化自体を担う魔法陣は精霊士が作るものだが、もう一つ必要なものは対象を陣に対して縛る働きをするんだ。」
「それなら俺だな!」
ラキアが自分にできることを見つけ、名乗りを上げる。
「そうだね、ラキアは道具を作るときに細かい魔力の操作で作ってるし、適任だと思う。」
「だよな。そうと決まれば魔法陣の練習だぜ。」
「そうだね。魔法陣の展開ができるようになるのが先決、というよりそれをできるようにならないとこの話は始まらないね。」
「そうですね。」
みんなもうなずく。
「では、わたくしが治療を。ルルとゼスとセドルが防御。マリーとラキアが魔法陣の展開。でよろしいかしら?」
「うん。」
「それじゃあ!みんな頑張るわよ。」
「もちろん。必ず成功させよう。」
「だな。」
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