踊り子の魔女 第二十六話:新しい仲間

 家に帰ってきてからすぐに客室へ向かった。
助けてもらった日から、住まわせてもらっている部屋だ。

部屋で二人きりになると、私はシェシェといろんな話をした。

「シェシェのこと見られて、本当に嬉しいよ。」

『私もやっと本当にマリーと喋れてる感じがする。』

「本当に見られてよかった。で、さっきは全然気づかなかったけど、シェシェ、思ってたより大きいね。」

『それは、どういう意味?ほめてるの?けなしてるの?』

「ほめてるとか、けなしてるとかじゃなくて、単純な感想。」

そうなのだ、泣き止んでから落ち着いてシェシェのことを見ると、自分が思っていたよりも大きいことに驚いた。勝手に精霊は、鳥や虫のように、小さい存在だと思っていた。
猫、ほど大きくないけど、思っていたよりは大きかった。

「精霊はさ、みんなシェシェみたいな感じなの?」

『私みたいって、見た目のこと、性格のこと?』

「ああ、見た目のこと。みんなこんなに綺麗なの?」

『私ほどじゃないけど、綺麗だよ。でも、そもそも、精霊は成長につれて、自我が芽生えると、自分の思う形に成長していくの。だから、本人にとって良いと思う形だから、私が評価できるものでもないの。』

「へぇーそうなんだ、すごいね。じゃあさ、もっと、見たことない形とかになったりするってこと?」

『まあ、無いとは言わないけど、基本、成長過程で目にしたものに影響されるから、ほとんど、この世界に存在するものに近い形になる。』

「なるほど、なるほど。面白いね。じゃあ兄弟とかでも見た目が違うの?」

『それも、本人次第。似せたければ似るし。自分のなりたい姿があるならそれになる。』

「へぇ。本当、知れば知るほど、どんどん知りたいことが増えていくね。」

『まあ、焦らなくても、これから時間はたくさんあるし、マリーも精霊士を目指すから、いろんなことに出会えるよ。』

「うん。今日はあのまま特訓が終わっちゃったけど。また明日から、しっかり勉強頑張る。」

『私も協力するから、頑張って。』

コンコンッ。
ノック音とともに声を掛けられる。

「二人とも入っていいかな?」

「どうぞ!」

ワクワクした気持ちのまま返事をすると、大きな声が出てしまった。恥ずかしい。

「二人にちょっと話があってね。」

そう言いながら部屋に入ってくる先生の後ろに、小さな、青い精霊がいるのが見えて、思わず声が出た。

「先生!その、後ろの、その子は精霊ですよね?!」

そしてもう一つ驚いたのが、それが精霊であるということに、確信が持てていたことだ。

「ああ、よかった、見えるようだね。この子はミリ。水の精霊で、私のパートナーだよ。」

「あ、え、もしかして、今まで、私がその子のこと見えてなかったんですか?」

「いいや、会うのは今日が初めてだよ。見えないのにあっても意味ないって、ミリが言ったから、無理に会わせなかったんだよ。でも今日、マリーがシェシェのことを見られるようになったから、試しにつれてきたんだ。」

「そうなんですね。初めまして、マリーです。よろしくお願いします。」

『シンシアが、才能があるって言うし、一緒にいるのがシェシェ様だし。すぐに見えるとは思ってたけど、まさかこんなに早く私のことも見えるようになるなんて。マリーやるじゃない!』

「ありがとうございます。」

『敬語じゃなくていいわよ!私はミリっていうの。よろしくね!』

『相変わらず、無駄に元気ね。』

『もうそんなこと言わないでくださいよ、シェシェ様。』

「あれ、仲悪いの?」

『そうじゃないけど。あんたにその呼び方されるの嫌なの。やめてよね、その呼び方。』

『だって、シェシェ様、シルフの系譜ですよね?』

『......。そうだけど、家族とはもう数百年会ってないし。その呼び方は慣れてないからやめて。』

『ダメです。四大精霊の系譜の方を、呼び捨てにはできません。何を言われても、このままでいきますから。』

シェシェがミリをじっと見つめる。
ミリは、にっこり笑ってる。

『......。はぁ。』

なんだかよくわからないが、シェシェがあきらめたのはわかった。
シルフ?系譜?様呼び?
聞きたいことは山ほどあるが、それを許さずに、先生が話し出した。

「よしよし、自己紹介も済んだし、本題に移ろう。」

「あ、はい。」

「私も、そろそろ旅を再開しようと思ってて、二、三日のうちに出発したいんだよ。」

「え?先生、ここ先生の家じゃないんですか?」

「ああ、違うよ。ここは一軒家の形の宿だよ。」

「そんなものがあるんですね。」

「そうそう。精霊士は、誰もいないところで、独り言を言っているように見えるから、基本的に一軒家の形の宿を借りてるんだ。」

「ああ。なるほど、確かに。」

「で、だ、マリーは私の弟子になったから、もちろん旅には連れて行こうと思っている。でも、弟子にするときに旅の話をしてなかったから、一応確認をしに来たんだ。」

「はい、もちろんついていきます。もともと、私も旅の途中ですから。むしろ世界を見て回るのが目標なので嬉しいです。」

「それはよかった。じゃあ出発は二日後にしようと思ってるから、明日は旅の準備をしっかりしてほしい。もちろん、マリーはまだ旅に慣れてないから、この先困ったことは助けるから、あんまり気負いすぎなくて大丈夫だからね。」

「はい、ありがとうございます。一応シェシェも、大丈夫だよね?」

『もちろん、私はどこでもマリーについていくよ。』

『シェシェ様、お優しい。』

『うるさい。』

「シェシェ。そんな言い方はちょっと。」

『いいの。躾は大事。』

「あはは、ミリは、シェシェのことがだいぶ好きみたいだね。」

『そりゃあ四大精霊の系譜ですよ?ねえシェシェ様。』

また、シェシェは黙ってミリを見つめた。

『......。』

「シェシェ。」

『いいの。』

「まあまあ、二人のことは二人で。というわけで、マリー、改めてこれから長い時間を共にする仲間として、よろしくね。」

「はい!よろしくお願いします!」


【第二章 完】

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