踊り子の魔女 第七十一話:精霊史
【最初の精霊師】
遠い、遠い昔。
精霊王が精霊たちと楽しく暮らす国がありました。
ある日、水の王ウンディーネは、人間のもとで生きてみたいと王に願った。
風の王は反対し、火の王は面白がり、土の王は心配した。
「やめなさいよ。王を困らせるものではありませんよ。それにあなたには王としての責任があります。一人の人間にのみ力を使うなどあってはいけないことです。」
「いいんじゃん別に、面白そうだし。何が起こるかわからないからこそ試してみないとわからないでしょ。ここはひとつ実験ということで。」
「我は心配だ。王という存在が一つのものに縛られることが。」
「ノームの言う通りです。力が偏る可能性があるの許すことはできません。」
「あなた方の許しは求めておりません。私は王にお聞きしているのです。」
「で、どの人間と一緒に住むの?」
「話を進めないでください。力のバランスが崩れるというのは、簡単に許容できる問題ではありませんよ。」
「誰もシルフには聞いてないんだから、ちょっと黙っててよ。」
「黙れとは何ですか、私は世界のことを思って言っているのですよ。」
「あーハイハイ。ほんっと頭固いなー。」
「頭が固いのではなく、慎重に物事は決めるべきだと言っているだけです。」
「まあまあ、二人とも落ち着け。我としても、正直簡単に賛成はできぬ。」
「改めて言いますが、私は誰の許しも意見も求めていません。王に判断を仰いでいるのです。」
玉座に座った王は、ただ黙って四人の会話を聞いていた。
四人が黙り、王も沈黙している。
静かな時間が流れる。
どれくらい時間が経っただろうか。サラマンダーはうとうとし始めている。
「よきにはからいなさい。」
一言王が言った。
「え、やったじゃん。ウンディーネどうなったか聞かせてよ?」
さっきまで意識が飛んでいたとは思えない速さで、サラマンダーが反応を返してきた。
「王よ。ありがとうございます。」
「王がそうおっしゃるのなら、私は異論はありません。」
「我は、やはり少し心配だな。」
「で、どんな人間となんだっけ?」
「いいえ。まだです。人というものがどんなものなのかを知りたいというのがきっかけなので。
「フーン。そういうことね。ま、誰か決まったら紹介してよ。」
数日後、ウンディーネはサラマンダーとの約束を守り、王宮へ一人の人間を連れてきた。
それが、最初の精霊師である。
***
【かつての精霊と人間】
人間と精霊が初めて共に生きた時代から、時は流れ精霊師が当たり前になった時代。
人々と精霊は日々当たり前のように共存し、交流していた。
精霊師という仕事は誰でもなりやすい職業で、少しばかり相性の良い精霊を見つけられれば、魔力や魔法の才能に恵まれなくても、自然の力で術を使用することが叶った。
人は自然を大切にし。精霊は人間の生活に力を貸した。
この時代では、精霊師はむしろ一般的な職業で、今の魔術師と同程度の数は存在していたといわれている。
この数が減るのは後の時代、三界大戦のあとである。
魔力のないものも、少ないものも。どんな人間も精霊とは意思疎通ができていた。
意思疎通をできるかどうかなど、能力の一つとして数えることなど想像もつかないほど、当たり前に精霊と人間は共存していたのだ。今日では、考えられないほど精霊と人間というのは、昔は共に生きるものだったのだ。
***
【精霊新世紀譚】
A.A. 450年 三界大戦の終結
三界大戦が終わり、【Anno Spei / アンノ・スペイ】を新暦として新たな時代が始まる。
三界大戦で、大地は痛み、火は勢いをなくし、大気は汚染され、水は蒸発した。
精霊たちは力の根源を大きく傷付けられ、もはや一極集中で精霊たちを養うことはできなくなってしまった。
生まれたばかりの精霊王を、守るため。
そして生き残った精霊を生かすため。
四大精霊は、次代に王の座を渡した。
先代は、幼き王を守るために。
新王たちは、それぞれの系統を守るために。
多くの精霊と精霊王たちは、新たな星オプラスへ移った。
残った四大精霊の王と、系譜たちは散り散りに、それぞれの居場所を探した。
いつの日かまた、楽園を再建する日を約束して。
***
「どれも面白いんだけど、分厚くて読み切れなーい。」
先輩に勧めてもらった本をつまみ食いしながらいろんなジャンルを読んでみたけど、どれも分厚くて途中で読むものを変えてしまう。
「あー。」
バサッとベッドに倒れこむ。
今日はこれくらいでいいか。せっかく休みの日なんだし何かほかのことしよーっと。
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