踊り子の魔女 第六十八話:今日から二年生
腕を大きく広げて、思いっきり息を吸う。
久しぶりの学校のにおいを体全体で感じながら、私たちは今日から二年生になる。
ルルとゼスも無事進級が決まり、またみんなで楽しい学園生活を送れる。
「さて、クラスの確認をしますか。」
『去年と同じじゃないの?』
「毎年クラス替えがあるって、入学したときに言ってたから、多分三年生になるときも変わると思うよ。」
シェシェと話しながら私は、学校に入ってすぐの掲示板を見に行くと、久しぶりの後ろ姿が目に入った。
「ルル!おはよう!どうだった休みは?実家に帰ってたんでしょ?」
「マリー!久しぶり。みんなで遊んだ後に実家に帰ったよ。帰った後は、まあ社交とか社交とか、お茶会とか…。」
ルルの瞳から光が消えて、遠くを見つめだす。慌ててほかの話題をぶつける。
「ルル、ルル、大丈夫?いろいろお疲れ様。で、トーカは?もう会った?」
「うんん。まだ会ってないよ。」
「お二人ともお久しぶりです。」
真後ろから突然声がして、心臓が跳ねる。
「ひ、久しぶり。トーカ、びっくりさせないでよ。」
「そうよ、なんなのよ、やめてよね。」
「ふふふ、二人を驚かせようと思って。それで、クラスはもうわかったの?」
ルルを見つけて、話し始めてしまいまだクラスは確認できていない。何より、人が多くて見えない。
「こんなに人がいるのに、確認できてるわけないでしょ。」
「あら、ちょっと面倒だから二人が私のクラスを知ってたら聞こうと思ってましたのに。」
困り顔で、頬に手を当てているトーカに、ルルが嫌な顔をする。
「自分で見なさいよ。」
「だって、あんなに人がいるのに大変そうじゃない。だから、ね。」
にっこり笑ってお願いするが、当然ルルにそんな手が通じるわけもなく。
「やだね。」
ルルは、フンッとそっぽを向く。
いつものやり取りが見れて、笑みがこぼれる。久しぶりだな、みんなで同じクラスになれたら楽しそうだなぁ。なんてぼんやり考えながら二人を見ている。
「人が引いたら見たらいいよ。それまで待とう。」
トーカはやれやれといった感じでため息をつき、ルルはうんうんとうなずいてくれる。
「やあ、三人とも久しぶりだね。」
また突然声を掛けられる。今度は人ごみの中から出てきたセドルだった。
「セドル!久しぶり!」
「久しぶりだねマリー。会えてうれしいよ。」
「別に私は久しぶりじゃないけど。」
ルルはセドルとは幼馴染だし、多分休みの間もあったりしてたんだろうな。
「細かいことは気にしないほうがいいよルル。で、何してるんだい。」
「人が多いから、クラスの確認ができなくて、人がいなくなるまで待つことにしたの。」
「そうか、それならみる必要ないよ。なんとゼスとラキアと僕、それから君たち三人、今年はみんな同じクラスだよ。」
「え、え?そんなことってあるの?」
さっき、みんなで同じクラスになれたらいいなって思ってたけど、まさか本当にそんなことになるとは思っていなかった。ラッキー!
「やったね!トーカ今年は同じクラスだよ!セドルも!」
「今年もマリーと同じクラスになれるなんてラッキーじゃん!」
「僕もマリー達と同じクラスで嬉しいよ。」
「そうね、みんなで同じクラスになれて、私も嬉しいです。」
「それじゃあ、みんなで一緒に教室に行こー!」
新学期早々、とんでもなくうれしいことが起こり、私はウキウキしながら教室へ向かった。
***
二年生ということもあり、それぞれ名前と使用魔法を自己紹介で行い、そのまま授業が始まった。
一時間目は、二年生になってから始まる自由研究についての説明だった。
「皆さんには、今年から三年生までの二年間。ご自身で好きな研究内容を設定してそれについての研究を進めてもらいます。研究というと大げさですが、興味のあるもの、自分が極めたいもの、何でもいいので調べたり、実験をしたりして、それをまとめるということをしていただきます。あまり難しくとらえず好きなことをたくさん調べてください。それではまず…。」
先生が自由研究の進め方、仮にどんなことを先輩たちが行ってきたかなど、淡々と説明を進めていく。
「自由研究かぁ。」
声にならないほどの小さな声でぽつりと、つい口から出た。
私は、精霊士。やりたいことは決まっている。
精霊士として、精霊と人の新しい架け橋を作りたい。
自然と口角が上がる。自分の目指したい物語を始められる予感がする。
「それでは来週の授業で何について研究するかを一人ずつお聞きしますので、皆さん考えてきてください。本当に何でも気になることでいいので、楽しくできることを選んでくださいね。」
キーンコーンカーンコーン。
先生が話し終わったまさにその瞬間に、タイミングよくベルが鳴り授業が終わった。
ノートとペンを取り出し、私は思いつくままにやりたいことと、それに必要なことを書き出す。手が追い付かないほどにアイデアが浮かんできている今を逃すわけにはいかない。
息が止まるほど集中して書き終わる。
フッと椅子に背中を預け、前を見るとシェシェが目の前にいる。
『終わった?』
「う、うん。」
『じゃあ行きましょう。』
「え、あ、どこ?」
『次の授業。基礎魔法の授業。』
「え!あ!あと五分じゃん!みんなは…。もう行ったのか。」
見渡すと教室には誰もいない。
『集中してたから、私が連れていくって言ってみんなは先に行かせた。』
「ありがとうシェシェ。」
『いいから、早くいく。』
「はい!」
勢いよく教室を飛び出して、私は訓練場へ向かった。
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