踊り子の魔女 第六十六話:久しぶりの我が家
「ああ、な、何とか、耐えた。」
「耐えたなぁ……。」
昼食に手も付けず、ルルとゼスが椅子の上で、口から魂を出している。
「よかったね、二人とも無事進級できるね。」
あれから、とんでもない力業で二人は試験を乗り越え、無事進級できることになった。
なんだかんだで、練習場で知り合って、六人で昼食をとるようになり一年がたとうとしている。一週間後には長期休暇に入り、しばらくはみんなとお別れだ。
私もルルとゼスが進級できなかったら、きっと長期休暇を楽しめなかったから、本当に嬉しい。
「で、みんなはどうするの?寮に残る?家に帰る?」
トーカがみんなに休みの過ごし方の話を振ってきた。
「僕たちはみんな家に戻ろうと思ってるよ?マリーはどうするんだい?」
「私も家に戻るよ。先生にもクレアにも会いたいからね。」
「私も帰る。もう勉強はしない!好きなことしまくるの!武闘大会でも出ようかなって。」
「そっか、じゃあみんな家に戻るのね。」
「じゃあ、しばらく寂しいね、休み中にみんなで遊ぼうよ!」
「いいな!時間あるしどっか行こうぜ!」
「そうだね。武闘大会もいいけど、みんなで遊ぶの賛成!」
試験が終わってテンションが上がっているのか、その場で、どこにいつ行くのかまで決めてしまった。
これで寂しさも吹き飛び、休みが待ち遠しくなった。
***
そして一週間後、電車に乗って無事家まで帰ってきた。
「ただいまー!」
このにおい、この雰囲気。懐かしー。
「おや、マリー早かったね。駅まで迎えに行くつもりだったのに。」
「マリ姉!」
『マリー!』
クレアとミリがものすごい勢いで飛んできた。
「久しぶりだな。元気だったか。」
ベラもスッと横に来て声をかけてくれる。
「みんな久しぶり!!あーー、会いたかったー。」
クレアとミリのことをギュッと抱きしめて、自分が実家に帰ってこれたことをしみじみと感じてる。
「髪も伸びて、なんだか大人っぽくなったね。雰囲気がよくなったね。」
「本当ですか?特に何も変わってないですけど。」
「どうだい学園は。」
「とっても楽しいです!色んな事が学べるし、友達もたくさんできました。」
「それはよかった。マリーを行かせた目的の一つに同年代の仲間を作ってもらうってことだったからね。」
「さ、夕飯の用意が出来てるよ。みんないつまでも玄関にいないで、早く入ってきな。」
さっきから喋らず、くっついて離れないクレアを抱きかかえて、リビングへ向かい、みんなでにぎやかな夕食を囲んだ。
学年一の優等生トーカの本当の顔の話。
遺跡で水の精霊王に出会った話。
青魔導士のラキアに出会えた話。
優秀な魔法使いセドルの話。
ルルとゼスが進級試験で苦しんだ話。
とにかく一年間の中で起こったことが多すぎて、まったく話が終わらなかった。
***
「マリ姉!見ててね!」
翌日、中庭でクレアの精霊術の練習に付き合っていた。
「行くよ!ベラ!」
『おう!』
クレアが手を振り上げる、ふわっとなんか生暖かいような、なんとも言えない空気を感じた。次の瞬間、一瞬ふらっとする。
「え。」
ちょっとよろめいて、目をぱちくりさせる。体がなんかふわふわするような、力が入らないような…。
「大丈夫かい。」
隣にいた先生が、肩を抱いてとっさに支えてくれる。
「クレア、出しすぎだよ。マリーに見てもらって嬉しいのはわかるが、一度に出す量の訓練はまだまだ必要だね。」
「ごめん!マリ姉。ちょっとまだ量をうまく調整できないし、任意の相手だけに効果を与えるってことが出来なくて。」
「だ、大丈夫。それより、すごいよ一年間でベラを見られるようになって、一緒に術まで使えるようになるなんて。」
「へへ!そうでしょ!」
「こらこら、甘やかさない。まだまだこれじゃ誰でも彼でも眠らせることになる。しかも他にもあるベラドンナの花の効果も使えるようにならないといけないから。道のりは遠いよ。」
「はぁい。」
「そっか、ベラドンナが持つ特性を術として使うってことは、まだまだ色んなことが出来るってことだね。楽しみだねクレア。」
「うん!マリ姉みたいに、パパっとシャシャっとかっこよく術を使えるように頑張る!!」
「うんうん、楽しみにしてるよ。頑張れ!」
「さて、どんどん練習を続けるよ。今日はマリーも一緒なんだから、いつもよりやる気もあるだろうし、ビシバシ行くよクレア。」
「はい!」
先生にみっちりしごかれているクレアに、五年前の自分を重ねる。先生に出会った頃の幼くて何にも知らなかった自分。クレアにもあの頃の自分みたいに、楽しんで精霊術を学んでほしいな。
「さて、私も腕がなまらないように練習しますか。」
『そうよ、新学期もマリーのすばらしさをすべての人間に知らしめないと。』
「そ、その必要は全くないからねシェシェ。」
相変わらずとんでもない発言をするシェシェの話にくぎを刺し、私は呼吸を整える。
周りの音が遠くなる。自分の中に流れる魔力の流れと、周りを流れる風の流れに集中する。そしてシェシェの流れと親和させる。より繊細に、より正確に魔力をコントロールする。
足を一歩前に出し手を挙げて、回る。学園ではなかなか練習できないけど、ここならいくらでも好きに舞える。
シェシェと呼吸を合わせ、二人で一緒に風を操り自分の体を操る。より美しく、よりしなやかに。
地面をけり上げ、空中へ。風に乗ってくるくると舞い上がる。もっと高く!
降りるときもふんわりと綺麗に。
そっと地面に足をつけ、目を開く。
「マリ姉!さすが!最高!綺麗!」
「ますます腕を上げたね。もうそれを仕事にして生きていけるよ。」
訓練をしていた先生とクレアが、いつの間にか私の踊りを見ていたようだ。
は、恥ずかしい。なんか久しぶりに見られると何とも言えない恥ずかしさがこみあげてくる。
『そうでしょう。当然よ。』
相変わらず謙遜という言葉を知らないシェシェは、自慢をしている。
「ど、どうですかね先生。学園ではあんまり練習ができてないんですけど。」
「さっきも言ったけど、それを仕事にできるくらいにはもうマリーの踊りは一つの作品として完成していると思うよ。それに、技術的にも魔力の量の調整がより繊細にできるようになっていて、師匠としてはとても嬉しい成長をしてくれているよ。」
「本当ですか!そう言ってもらえるととっても嬉しいです。」
「本当にきれいだったよマリ姉。私も負けてられないよ。」
「クレアもありがとう。一緒に一流の精霊術士を目指そうね!」
安心できる場所で、思う存分踊りを踊り、先生には成長を認めてもらえて、クレアには憧れの存在として映ることが出来て、私はとっても嬉しい気持ちに満ちていた。
やっぱり、家族のいる家っていうのはとってもいいなぁ。
~*~*~*~*~*~【お知らせ】~*~*~*~*~*~
いつも『踊り子の魔女』を読んでくださる皆様、本当にありがとうございます。
この度、私生活が一時的に忙しくなり、誠に勝手ながら投稿頻度を「週一回、月曜日」に落とすことを決めました。
私は、この作品を必ず完結させるつもりです。
最初にプロットを作った時から、どう完結させるかまでしっかりと構想を練って始めました。
ですので、今は「とにかく続けて、完結まで持っていく」ということを一番に考え、一度週一投稿のペースにさせていただこうと思いました。
また私生活が落ち着きましたら、投稿頻度を上げたいと考えています。
ペースは少しゆっくりになりますが、どうかこれからもマリーたちの物語を待っていただけると嬉しく思います。
改めまして、ここまで読み続けてくださった皆様、本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします!
改めまして、ここまで読み続けてくださった皆様本当にありがとうございます。
コメント
コメントを投稿