踊り子の魔女 第五十八話:誓い
式も終わった。
寮の部屋もわかった。
日が沈み始めて、あたりがぼんやりオレンジ色に染まっている。
私は、先生とクレア、シェシェとミリとベラと一緒に、お祝いの食事をしに町へ来ていた。
入学式の日は、新入生は家族と食事に行くことが許されているので、私は先生たちと一緒にしばしの別れを惜しみに来たのだ。
『マリーが、あのマリーが、こんなに立派になってミリは感激ですわ!』
「大げさだよミリ。学校に通うことになっただけじゃん。」
『初めて会った頃は、私のこと見えもしなかったのに。こんなに立派な学園の生徒になるなんて。しかも推薦枠で入学するなんて、本当に、本当に…。』
相変わらず、感情が出やすいミリは、こんな時も泣きそうになっている。
「そんな、泣きそうな顔しないでよ。これからおいしいご飯が出てくるのに。泣いてたらみんなにとられちゃうよ。」
『でもぉ。』
『相変わらず、泣き虫。』
『だってぇ。』
『もういいから、いい加減にして。』
『うう。』
相変わらず、シェシェに冷たくあしらわれて、やっと静かになった。
『それにしてもいい店だな!料理もおいしそうだし。』
「そうだね。ベラは何食べたい?」
『あたいはねぇ。』
本当に、ここに来る直前に、クレアはベラの姿を見ることができるようになった。それからというものベラはクレアにべったりで、片時も離れようとしない。
「クレアも、好きなものたくさん選ぶといい。マリーも。今日はたくさんおいしいものを食べよう!お祝いだからね。」
「はい!」
久しぶりに、修行も、仕事も、何にもない。みんなでゆっくりできる時間。しばらくはみんなと一緒に過ごすことすらできなくなるから、ここでいっぱい楽しまなくちゃ!
***
たっくさん食べたなぁ。
ポンポンとおなかをたたきながら、食後のお茶とデザートを待っている。
「それで、マリー。これから始まる新しい生活には、どんな展望を描いているんだい?」
「展望…。」
みんなが静かに私の話に耳を傾ける。
「私、新しく夢ができたんです。でもまだうまく言葉にできません。なんとなく…精霊と人間がもっとたくさん触れ合えるような、出会えるような、知ってもらえるような…。そんな世界にしたいんです。うーん、なんか違うんですけど、こんな感じです。だから、そのために、まず自分が精霊のことをしっかり知っていきたい。ちゃんと認められた魔術師になりたい。それが今の目標です。…こんな感じですかね?」
パチパチパチパチ。
「マリ姉!かっこいいよ!」
クレアが笑顔で拍手をしてくれている。
「そうだね。言ってることは結構すごいことだって自覚があるのかはわからないけど。いい夢だよ。そこに向かって全力で取り組むマリーを私は応援し続けるよ。」
『マリー、やっぱり成長しましたわ!わたくしも嬉しいですわ。』
『さすがだよ、やっぱあんたすごいよ!』
『いつでもそばにいる。どんな時も、マリーのことを隣で支えるから。マリーは自分を信じて、どこまでも駆け抜けなさい。』
みんなが、思い思いに私のことを激励してくれる。
「それじゃあ!私は、この学園で、一流の精霊士になることを誓います!」
場の雰囲気のせいだろうか、大きな目標を掲げてしまった。みんなの前で誓ったから、もう破ることはできない。
どんな時も前を見て、必ずかなえるまであきらめない。こぶしを固く握り、自分自身に誓いを言いつける。震える心を抱きながら、私はまた一つ成長できたのかもしれない。
紅茶とケーキが運ばれてくる。
熱くなったこの場が少し落ち着き、穏やかなお祝いと別れの席が、もうすぐ終わりを迎えようとしていた。
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