踊り子の魔女 第六十一話:みんなの試験

 お昼ご飯を食べている時に、トーカが入学試験の課題についての話を始めた。

「そういえばさ、あの『得意なことを披露する』って意味わかんない試験。結局みんな何やったわけ?」


学園の広い食堂。私たち六人掛けのテーブルを囲んで食事をしていると、ふとトーカがそんなことを口にした。周りに他の生徒がいないのを確認して、すっかり素の荒っぽい口調になっている。


「あ、そういえば私、試験の前に廊下でルルとトーカが言い争ってるの見たよ。入学式の日にまたあって驚いたもん。」


「え、マリーアの時見てたの??なんかちょっと恥ずかしいわ。トーカが何したらいいんだーってキレてたのよ。」


「キレてはないだろ。ちょっとムカついただけ。」


「はいはい。それで、私が偶然怪我人を見つけて、治療させてくれって頼んであげたの。しかもそれが、たまたまゼスとラキアだったの。まさかこうやって友達になるなんて、びっくりだよね。」


ルルが胸を張ると、トーカが呆れたようにため息をついた。


「感謝してますよ。私は銀魔法の使い手だからね、二人の裂傷を、審査員の前で一瞬で完治させてやったら、治癒の速度と正確さに感心して貰えたってわけ。おかげで文句なしの合格。」


一瞬で完治……。さすが、新入生代表になるくらい優秀な治癒魔術師だ。


「まじあん時は助かったよな。俺が調子乗って剣ぶん回したら、慣れてねえからゼスを怪我させちまってよ。」


「あれは怪我というより負傷の域だったけどな。」


ゼスがはぁーと、深いため息をついてる。


「ルルは? 身体強化魔法を使うって言ってたけど。」


私が聞くと、ルルはフォークを持ったままニヤリと笑った。


「私はね、試験会場にあった一番分厚い鋼鉄の的を、強化した拳で一撃で粉砕してやったの!」


「……試験会場を破壊しただけだろ、それ」


「失礼ね、ちゃんと用意してもらったやつよ。」


ゼスが真面目な顔でボソッとツッコミを入れる。


言い返したルルの手の中のフォークが……。見なかったことにしよう。


「ゼスとラキアはどうしたの? 試験の時に知り合ったって言ってたけど。」


そのまま何事も無かったのように、ルルが話を振ると、ラキアさんが得意げに笑った。


「俺たちは二人で組んで試験を受けたんだよ。俺は魔法工学を学びに来ただろ?

だから、俺が設計して打った『魔剣』の理論と構造を俺がプレゼンして、それをゼスと一緒に実際に使って見せたんだ。」


「ラキアの作った剣は、それぞれに合った魔力伝導率を導き出してくれるんだ。お陰で俺の魔力を効率良く引き出してくれるから、魔剣士としての最高の技を審査員に見せることができた。あれはラキアの剣のおかげだ。だが、ラキア自身に持たせるのは反対だ。」


ゼスさんがラキアさんを真っ直ぐ見て言う。なんだかこの二人、出会って間もないのにすごくいいコンビだ。魔法工学の知識と、それを扱う剣士の腕前。お互いの長所を生かしあっているのがすごい。


まあ、ラキアは剣術の腕はないみたいだけど。


「セドルは? 魔法の歴史を学びに来たって言ってたけど、まさか試験で歴史を語ってないでしょ。」


ルルが隣に座るセドルさんに視線を向けると、彼はスープのカップを置き、いつもの穏やかな笑顔で答えた。


「僕かい? 僕は普通の魔術師としての技を見せただけだよ。会場に複数の的を出してもらって、それを別々の属性の魔法で、連続で撃ち抜いただけさ。」


「……」 

「……」

「……」 


なぜか、ルルとトーカ、ゼスがジト目でセドルさんを見ている。


お昼ご飯を食べている時に、トーカが入学試験の課題についての話を始めた。 「そういえばさ、あの得意なことを披露するって意味わかんない試験。結局みんな何やったわけ?」 学園の広い食堂。私たち六人掛けのテーブルを囲んで食事をしていると、ふとトーカがそんなことを口にした。周りに他の生徒がいないのを確認して、すっかり素の荒っぽい口調になっている。 「あ、そういえば私、試験の前に廊下でルルとトーカが言い争ってるの見たよ。入学式の日にまたあって驚いたもん。」 「え、マリーあの時見てたの??なんかちょっと恥ずかしいわ。トーカが何したらいいんだーってキレてたのよ。」 「キレてはないだろ。ちょっとムカついただけ。」 「はいはい。それで、私が偶然怪我人を見つけて、治療させてくれって頼んであげたの。しかもそれが、たまたまゼストラキアだったの。まさかこうやって友達になるなんて、びっくりだよね。」 ルルが胸を張ると、トーカが呆れたようにため息をついた。 「感謝してますよ。私は銀魔法の使い手だからね、二人の裂傷を、審査員の前で一瞬で完治させてやったら、治癒の速度と正確さに関心して貰えたってわけ。おかげで文句なしの合格。」 一瞬で完治……。さすが、新入生代表になるくらい優秀な治癒魔術師だ。 「まじあん時は助かったよな。俺が調子乗って剣ぶん回したら、慣れてねえからゼスを怪我させちまってよ。」 「あれは怪我というより負傷の域だったけどな。」 ゼスがはぁーと、深いため息をついてる。 「ルルは? 身体強化魔法を使うって言ってたけど。」 私が聞くと、ルルはフォークを持ったままニヤリと笑った。 「私はね、試験会場にあった一番分厚い鋼鉄の的を、強化した拳で一撃で粉砕してやったの!」 「……試験会場を破壊しただけだろ、それ」 「失礼ね、ちゃんと用意してもらったやつよ。」 ゼスが真面目な顔でボソッとツッコミを入れる。 言い返したルルの手の中のフォークが……。見なかったことにしよう。 「ゼスとラキアはどうしたの? 試験の時に知り合ったって言ってたけど」 そのまま何事も無かったのように、ルルが話を振ると、ラキアさんが得意げに笑った。 「俺たちは二人で組んで試験を受けたんだよ。俺は魔法工学を学びに来ただろ? だから、俺が設計して打った魔剣の理論と構造を俺がプレゼンして、それをゼスと一緒に実際に使って見せたんだ。」

「ラキアの作った剣は、それぞれに合った魔力伝導率を導き出して、くれるんだ。お陰で俺の魔力を効率良く引き出してくれるから、魔剣士としての最高の技を審査員に見せることができた。あれはラキアの剣のおかげだ。だが、ラキア自身に持たせるのは反対だ。」 ゼスさんがラキアさんを真っ直ぐ見て言う。なんだかこの二人、出会って間もないのにすごくいいコンビだ。魔法工学の知識と、それを扱う剣士の腕前。お互いの長所を生かした見事な試験だね。 まあ、ラキアは剣術の腕はないみたいだけど。 「セドルは? 魔法の歴史を学びに来たって言ってたけど、まさか試験で歴史を語ってないでしょ。」 ルルが隣に座るセドルさんに視線を向けると、彼はスープのカップを置き、いつもの穏やかな笑顔で答えた。 「僕かい? 僕は普通の魔術師としての技を見せただけだよ。会場に複数の的を出してもらって、それを別々の属性の魔法で、連続で撃ち抜いただけさ。」 「……」 「……」 「……」 なぜか、ルルとトーカ、ゼスがジト目でセドルさんを見ている。 「セドル、あんたそれサラッと言ってるけど、とんでもない高度な魔力操作が必要だからね? サラッと言わないで、腹立つ。」 ルルの言葉に、私は首を傾げる。

そういえば、エルシカ先生が言ってたっけ。魔術師は呪文というカギを使って魔法を制御するって。別々の魔法を連続して使うってことは、すごい速さでいくつもの鍵を持ち替えて開けてるようなものなのかな? それに、切り替えて連続で使うってことは、呪文は多分言わないんだろう。すごいな。 「いや、そんなことないよ。ルルやトーカと違って普通の魔法だからね、僕のなんて練習したらできるものだから。」 セドルは謙遜しているけど、私からしたら普通にできることがまずすごい。 「で、マリーは何をやったの?」 ルルの質問に、全員の視線が私に集まる。 そんなに見ないで欲しい、別に大したことないから。 私はチラッとシェシェのほうを見た。 「私は、音楽を用意してもらって、シェシェと一緒にダンスを踊ったの」 「「ダンス??」」 「元々私は踊り子だったんだよ。だから試験では風を操りながら、私が一番好きな踊りを、思いっきり楽しく踊ったんだ。」 私の言葉に、みんなが顔を見合わせた。 「聞いたことないわ。すごいな。」

ポツリとトーカが呟いた。 「精霊と一緒に踊るなんて、すごいな。そんなこと出来んのかよ。」 ラキアさんとゼスさんがうんうんと頷いている。 『当然よ。私たち二人のダンスは最高だし、私のマリーは精霊士としては天才なの。審査員たちも太鼓判を押してたんだから。』


「シェシェそれは言い過ぎ。」 シェシェも誇らしげに胸を張って答えた。 みんながどんな魔法を得意としているのか、試験の話を通してすごくよく分かった気がする。 治癒、身体強化、魔法工学、魔剣術、そして高度な魔力コントロールができれば魔法はもっと広がるってこと。

私にはないものを、みんなが持っている。 【みんなで得意を伸ばして、足りないところは補い合う

ルルが言っていた言葉が、ストンと胸に落ちた。 この個性豊かなお友達と一緒なら、これからの学園生活、なんだかとっても楽しいものになりそうで嬉しい気持ちになった。

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