踊り子の魔女 第五十七話:あの時の
「改めて、おめでとうマリー。」
門の前に立ちながら、先生が笑顔で祝福してくれる。
あの日、試験のために立った門の前に、今一度立っている。今度はここへ通うために。
よかった。がんばって。正直試験の日は自分の好きなことというより、好きなことをやっただけって感じで、合格しているかどうか全く予想できなかった。
『まあ、あれだけ私と親和できてたんだから、むしろ落ちることはないって思ってた。』
「その、本当にさ。今でもたまに思うんだけど、共鳴して、親和して、二人の感覚を合わせるってそんなに難しいことなの?」
「本当に、相変わらず、出来ない人の気持ちがわからないことを。本来それが、どの精霊士も一生かけて極めようとするところだからね。マリーも、トップクラスの親和性とは言え、驕らず、学園でより親和性を極めるように。」
「はい…。」
とはいえ、自分ができてしまっているものがどれほど難しいのかわからないのも事実。
うーーん。まあ、とにかく自慢に聞こえないように、このことはあまり人に言わないほうがよさそうだなと思いながら、門をくぐり、入学式の会場へ向かう。
***
「改めまして、皆さん、本日はご入学おめでとうございます。皆さんがこのセントリアーナ魔法学園で、最高峰の学びと、素晴らしい経験を手にできることを祈っております。」
式が始まり、偉い人達が順番に挨拶をしている。誰が誰だかわからないけど、眠気をぎゅっと抑えながら、とりあえず前を向いて座っている。
とにかく早く終わらないかと、ぼーっと式に参加していると、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。
「新しい息吹を感じるこの佳き日に、私たちは歴史あるセントリアーナ魔法学園の入学式を迎えることができました。本日は私たちのためにこのような盛大な式典を挙行していただき、誠にありがとうございます。」
あの時の、試験の時の銀髪の女の子がステージの上でしゃべっていた。どうやら新入生代表のあいさつらしい。
そんなに優秀だったんだ。知らなかったぁ。
驚きを覚えつつも、知っている顔を見てなんだか少しだけ緊張が解けた気がした。
だけどやっぱり、早く終わってほしいという気持ちはぬぐい切れなかった。
***
式が終わると、受付の時に渡された紙に書いてある教室へ向う。教室に入り、席に着き全員がそろうのをソワソワしながら待っていた。
すると突然、隣の子が話しかけてきた。
「ねえ、あなたお名前は?私は、ルルカ・メレカ。隣の席になったから、せっかくならお友達になりません?」
!この長い赤毛!あの試験の日の子だ。
驚きつつも私は返事を返した。
「私はマリーです。よろしくお願いします。私も是非お友達になりたいです。」
「よかった!じゃあ、さっそく敬語はなしで。」
「はい、じゃないうん。よろしくね。」
「それで、そっちの精霊さんの名前も聞いていいかな?」
「え!シェシェのこと見えるの??」
「当然。知らない?ここ数年、魔術師には精霊の姿が見えるようになってるの。」
「聞いたことはあるけど、まさか本当だとは思ってなくて。私あんまり魔術師の知り合いがいないから。」
「なるほどね。で、シェシェちゃんだっけ?今日からよろしくね。」
『…よろしく。』
ものすごくいやそうに挨拶をするシェシェ。思わず補足を入れてしまう。
「あの、あのね、最初はこんな感じだけど、ちゃんと優しくていい子だからね。ごめんね。」
「いいよ、別に、誰でも彼でも仲良くする人のほうが信用できないし。私、あんまり細かいことは気にしないから!いつか私のことも気に入ってくれると嬉しいな。」
シェシェに対して物おじせずにそのまま話し続ける姿に少し驚いた。結構肝が据わってるのかも。
ガラガラ。
「それでは、全員そろっているか確認をしますね。」
先生が、入ってきて教室は静まり返る。私も背筋をピンと伸ばし、名前を呼ばれるのを待った。
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