踊り子の魔女 第五十四話:クレアの意思
行きたい学校が決まってから、二ヶ月ほど経った先生の仕事の手伝いはお休みして、毎日勉強と、病院通いをしている。
最初の頃こそ、あまり感情を出さなかったクレアちゃんが、最近では自分から話をするようになった。
ベラと既に仲良くなっていたのが良かったみたいだ。
ただ、辛い経験に心が疲弊していただけで、穏やかな生活をするうちに、落ち着いてきたみたい。体はまだまだ細いけど、ご飯も食べられるようになってるし、獣人ということもあって体が元々強く、回復も早いらしい。
よーし。そろそろ空き部屋を綺麗にして、クレアちゃんが住めるようにしないとね。
「それで、琴音先生。クレアちゃんの回復の調子が良いってことで、あと一ヶ月程で退院出来るんですよね?」
真剣に何かを見ていた琴音先生が、ふっと顔を上げてこちらを見る。
「ええ。とても順調だから、一ヶ月後にはマリー達の家に行けると思うわ。ややこしい手続きは、今回大人たちでやっちゃうから。ちゃんと感謝しなさいよ。」
「はい。本当に、何から何までありがとうございます。」
私は席を立ち、深々と頭を下げる。
ならよし、といった感じで琴音先生は手を振りながら部屋を出ていった。
ぼーっとしてて、人形みたいだったけど少しづつ笑顔も戻ってきたし、これからもっと安心して生活をしていけるように、私が頑張っていかないとね。
相変わらず話ができるだけで、クレアちゃんの目にベラは映っていないようだけど、これもおそらく私達と住むようになれば治るだろうって先生は言ってたけど。大きな原因は心の傷。今からでも少しづつ癒すのを手伝いたい。
「あの。なんで私の事引き取ることにしたんですか?」
小さな声で尋ねられる。
昨日、クレアちゃんがうちに来ることを教えたばかりだった。
「この国では、クレアちゃんの年齢は保護者が必要なの。だから本来は孤児院や教会に預けられるんだけど、私がクレアちゃんと一緒にいたくて引き取ることを先生に頼んだの。」
「なんで、一緒にいたいの?」
「そうだよね。クレアちゃんにとっては不思議だよね。まず、クレアちゃんに了解を取らずに話を進めてごめんね。当時は、クレアちゃんに意思確認をできなかったっていうのもあるけど、完全にこちらのわがままだった。その事は、謝りたいの。でもね、クレアちゃんを引き取りたかった理由は、正直私も上手く言葉にはできないの。自分が助けたからなのか、それとも見えない相手と話せるところが当時の自分に似てるからなのか。とにかく、なんだかほっとけないというか、親しみを感じるというか・・・。」
自分でも、なんとなくでしか言葉に出来なくて、言葉に詰まってしまった。
沈黙がただよう。私はひたすら思考を巡らせ、上手い表現がないかを探し回った。すると、クレアちゃんの方から話し始めた。
「私の事好きなの?」
シンプルだけど、確かな答えを出せる質問だった。
そうだ、多分私はこの子のことを気に入って好きになったんだ。
「うん。私は、クレアちゃんのことが好きなんだよ。」
クレアちゃんが笑った。
「そっか。へへっ。」
「これからもっと好きになると思う。だから、改めて聞くね。うちに、来てくれるかな?」
「お願いします。」
クレアちゃんは、頭を下げながら、了承の言葉をくれた。
「ありがとう!」
この小さな礼には、色んな気持ちや、クレアちゃんの覚悟がのっている。
私はこの思いに応えないといけない。責任取らなきゃいけない。
「これからは、私のことはお姉ちゃんだと思って頼ってね!」
「・・・・・・うん。」
クレアちゃんは、ポカンとした顔で、私のことを見つめる。まだまだ呼ばれるのは先かなー。妹が出来るの楽しみだったしお姉ちゃんって、いつか呼んでもらいたいけど、こればっかりはクレアちゃんに委ねないとね。
「よーし!それじゃあ明日はクレアちゃんの服を買ってくる!クレアちゃんは好きな色とかある?」
クレアちゃんが、晴れて我が家の一員となった。早速明日、生活道具を揃えに行くため、欲しいものや、どんなものが好きかを聞きながら、その日のお見舞いは終わっていった。
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