踊り子の魔女 第五十一話:新しい道
『疲れた。』
「本当にね。今日はみんな本当にありがとうございました。」
家について、すぐに椅子に座って机に突っ伏した。
「お疲れ様。保安局にあいつらを渡せたし。今日はお手柄だったよ。ご飯も食べてきたし、さっさとお風呂に入って寝るといい。」
「はい。そうします。」
とにかく眠い。サクッとお風呂を済ませてベッドに入ってしまおう。
ヨタヨタと、お風呂の方へ向かう私に、先生が声を掛ける。
「明日、少し大事な話があるから。しっかり休むんだよ。」
「はい。?なんだろう。怖いことじゃないといいけど。」
大事な話という単語で、ほんの少しめが覚めたけど、今の睡魔にこの驚きは勝てなかった。
お風呂を出て、ベッドに入る。考え事などする暇なく、私の意識は消えていった。
***
「おはようございます、じゃないですけど、一応。」
「おはよう。まあ、十一時は、ギリギリ午前中だよ。」
十一時だけど、もうすぐ十二時。つまりお昼。先生の時間感覚は、やっぱり、ややガバガバだ。
「これご飯。スープは温め直すといい。」
「はい、ありがとうございます。」
コンロに火を付ける。
「そうそう、昨日言ってた話なんだけど。マリー学校に行ってみない?」
「え?学校ですか?」
「そうそう。どう?」
大事な話って言ってたのに、さっくりと話されてしまって。少しだけしていた心構えは、意味をなさなかった。
「どうって言われても……、突然すぎて。なんでまた、そんな学校なんていう話になったんですか?」
「私が、精霊士として教えられることは、ここ三年で叩きこんだ。マリーが優秀すぎて、今はもう、教えることがなくなったんだよ。だから、今度は精霊士としてもだけど、友達を作ったり、他の魔術師に出会って、私との生活しか知らないマリーに、より広い世界で学んで欲しいんだ。」
思ったよりも、具体的な理由が帰ってきた驚いた。
「学校って、その、お金とかかかるんじゃないですか?」
「それは大丈夫。マリーが三年間で稼いだお金を銀行にためてあるから。それを使う。」
なんと、私のお金貯めてたとは……。特に使い道が無いから、お小遣い以外は、家賃と生活費くらいの感覚で先生に渡していたのに。というか、先生はこうなることを見込んで貯めていたのか??
「先生。先生は、最初から私を学校に行かせるつもりだったんですか?」
「言ってただろ?出会った頃に。世界を知りたくて旅に出たって。私と出会って、三年。だいぶ長い寄り道になったね。だから、もう一度違う環境に行かないかってことで提案したんだ。それに、マリーは本当に飲み込みが早くて、まぁ、それが才能なんだけど。だから、早いうちに私の教えられることはなくなると思っていたんだ。」
「新しい環境。」
そうだ。私、世界を知りたくて旅に出たんだ。忘れてた訳じゃないけど、その言葉を聞いて、目尻がなんだかじんわり熱い。
かつての、あの時のワクワクした気持ちを思い出す。
「もちろん、学校じゃなくて、旅に出るでもいい。でも、私としては同年代の友達を。これからの仲間を、見つけて欲しいと思ってる。」
先生が、こんなに私のことを考えてくれてたなんて……。
しばらく黙り込み、しっかり考える。
一緒に話を聞いていたシェシェやミリも、黙って私の回答を待ってくれている。
……。
「行きます。学校行かせてください。私も友達が欲しいです。それに色んな魔術師にも出会いたい。」
私は決心する。新しい世界に飛び込むと。
「先生に新しい道を示してもらって、私あの頃抱いていた、世界に対するワクワクする気持ちを思い出しました。……それに、シェシェや故郷の友達以外にも、新しい友達を作りたいです。」
先生が、ニコッと笑う。
「そうこなくっちゃ!何でもやりたいことに挑戦していくのが君の良いところだからね。じゃあ、早速手続きをしよう。今はオーリムの月で、半年後クアルタの月には入学だ。」
「先生。入学もいいですが、先にクレアちゃんのことをしっかりと終わらせてからですよ。」
「わかってるって。」
ひとまず学校に行くことは決まったけど、クレアちゃんのことはしっかりと面倒見ないとね。
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