踊り子の魔女 第四十七話:獣人の少女

 精霊を追いかけていると、だんだん町の端に向かっている。

普段は治安が悪く、あまり来ない場所だ。中心から離れ、人の目が減るとこんなにも荒れてしまうのか。視界に入る風景に施行を巡らせていると、突然声を掛けられる。

『こっち!』

精霊が止まり指をさしている。

その方向に視線を向けると、心臓が跳ねた。前に一度だけ見たことがある。二年ほど前のこと、大量の奴隷商が国につかまった。

あの時見た、助けられた人々の首や足首についていた鎖と同じ模様のものが、小さな女の子につけられていた。周りには三人の男たち。ぐったりとした女の子の髪をつかみ、怒鳴りつけている。

「二度と逃げようなんて思おうなよ!!次やったらもっと痛い目に合わせるからな!!」

「半獣の分際で、人間様の手を煩わせるんじゃねえよ!!」

「おいおい、半獣は高級なんだ。あんまり傷をつけるなよ。」

半獣……。よく見ると犬のような耳がついている。

奴隷は、数十年も前に廃止された。奴隷を作ったり、打ったりするのはれっきとした違法行為だ。

『お願い!クレアを助けて!』

当然、こんなの黙って見過ごせない。こぶしを強く握りしめた。

でも、三年間の中で一番学んだ。感情的になることは一番よくない。深呼吸をして自分を落ち着かせる。


「その手を放してください。」

男たちに向かって、声をかける。できれば手荒な真似はしたくない。


「はぁ、なんだお前。」

「小娘じゃねえか。誰に向かって言ってんだよ。」

「まてまて。この女も捕まえて売ればいいんじゃないか。」

「そうだな。そりゃいい考えだ。こんなところでもう一人、商品が増えるなんてついてるねぇ。」


どうやら、私のことも商品にしか見えていないみたい。


「奴隷は今の時代、どこの国でも違法です。それをご存じない話じゃないですよね。」

「そんなもん、ばれなきゃなんでもいいんだよ。」

「そんなことより、自分の心配したほうがいいぜ。つってももう遅いけどな。」


女の子をつかんでいた男が、女の子を投げすてこちらに近づいてくる。


「近づかないでください。このまま、その子を置いてどこかこの場を立ち去ってもらえないでしょうか?無駄な争いはしたくないので。」


「あはは!争うって、お嬢ちゃんと何を争うってんだよ。お嬢ちゃんは俺につかまっておとなしくしとけばいいんだよ。」

「俺たちに声かけるなんて馬鹿なことしなけりゃ、売られずに済んだのによぉ。まあ、自業自得だ。」

「つうことで、俺たちの商品になってくれよな。」


男が手を伸ばしてくる。


この男たちは、自分たちの行いをやめる気がない。なら、さっさと終わらせる。


男の足元を見えない手でつかむように、風ですくいあげる。男は勢いよく転び地面に肩を叩きつけられた。

後ろの二人が、勢いよく立ち上がる。

「小娘!何しやがった!」


先手必勝!先生がいつも言ってた。


倒れた男を、風で持ち上げると遠くへ吹き飛ばす。

残りの二人が戦闘態勢に入る前に、一気に畳みかけないと。

一人は、単純に圧倒的な風力を、正面からたたきつけ。死なない程度に建物の壁にたたきつける。

次!

振り上げられた剣を、視界にとらえる。

キン!風の刃で、剣をバラバラに切り刻む。

さっきと同じように、この男も壁にたたきつける


一人はどこへ行ったかわからない。

けど残りの二人は、確かに気を失っている。今は、この子を連れてこの場を立ち去るのが先。男たちのことは保安局に知らせて、後は国に処理してもらおう。

女の子を抱き上げる。軽すぎて一瞬驚き、体の一部がなくなっているのではないかと思い、体を確認するが、それはなかった。

とにかく、早くこの子を病院へ。

あんまりよくないけど。えい!

風で自分の足元を持ち上げ、勢いよく飛び上がる。そのまま建物の上を飛び移り、直線距離で病院を目指した。


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