踊り子の魔女 第四十五話:風よ舞い上がれ
「それじゃあ今日から、マリーを一人前の精霊士にするべく、みっちりしごいていくからね。」
「はい!頑張ります。」
家についた次の日、朝食の席で先生が宣言する。
今日から見習い精霊士として、本格的に修行が始まる。
身が引き締まる思いだ。やっと、本当に精霊士としての新しい人生が始まる気がした。
「それじゃあ朝食を食べ終わったら、復習としてまずは、風を生み出すところから始めようか。」
「はい。」
そのままいつものように、和やかに食事を進めて、かたずけまで済ませる。
「じゃあ、中庭へ出て始めようか。」
そう声を掛けられ、みんなで中庭へ出た。
***
「いきます。」
手のひらを上に向けて、前に差し出す。小さな竜巻を作るイメージ。
呼吸を整えて、手のひらを見つめる、手の先に力を集中させる感じ。ダンスをするときに感じる、風の流れを参考にする。あの感じ、体の中と体の周りを流れる、あの感じを意識する。それを手のひらに。
普段は、私の手足に合わせて、緩やかに投げれている流れを大きく、より外側へ流していく。
ふわっ。
小さな風が起こり、だんだん竜巻のようにくるくるとしてくる。
「できた!」
「よしよし。出だしは好調だね。どう?そのまま大きくできそう?」
「やってみます。」
流れを強くして、上に巻きあげるイメージをする。
「精霊術は想像力が大事だからね。具体的に想像してみるんだ。」
先生のアドバイス通り、よーくイメージしてみる。
高く空に。
大きくしようと思うと、自分の手が小さく思えた。
おろしてしまおう。本当の竜巻のようにするために。まずはつむじ風から。
両手を広げて一気に大きく!
「まって、マリー!」
先生の声が聞こえた時には遅かった。
良くも悪くも、才能のおかげで思った以上にうまくいってしまった。
「やばい!!」
叫びながら、風を止める。
吹き飛んだ洗濯物は地面に落ちて散乱している。置いてあったバケツやたらいが降ってくる。
カコン!カラカラカラ……。
中庭がぐちゃぐちゃになった。葉っぱもたくさん落ちている。
「すみません。」
「いやいや、マリーは悪くないよ。まさかこんなに一気にできるようになるとは。むしろすごく嬉しいよ。」
『さすがね、マリー。このままもっと腕を磨いて。』
『洗濯物は、私がすぐに洗いなおすから気にすることないわ。むしろ初日からこんなにできるなんて。驚きよ。おこる気にもなれない。』
みんなが口々にほめてくれるけど、まさかの事態すぎて、ちょっと喜びにくい。ごめん、ミリ。もう一回手間をかけさせて。もっとコントロール聞くようになったら、乾かすの手伝うから。
「いいよいいよ。この調子で、もう一回この庭いっぱいに風をおこしてみよう。」
そう言いながら、先生がバケツとたらい、洗濯物を家の中に入れている。
「ここで、もう一回やるんですか?」
「そうだよ。この庭いっぱいの風を今度はしばらく維持してみてほしい。」
「わ、わかりました。ではいきます。」
両手を広げて、つむじ風をイメージする。すぐに風は起こり、大きくなっていく。
地面の葉っぱが舞い上がっていく。あのはっぱを、屋根の上まで上げる!
だんだん楽しくなってきた。この調子で葉っぱを、どんどん、どんどん、屋根の上に載せていく。
「見てみて、シェシェ!葉っぱがどんどん上に行く!楽しくなってきた。」
調子に乗って、葉っぱを巻き上げていく。
「もういいよ、マリー。」
先生に声をかけられて、風を止める。
「どうですか?ダメですか?」
「いや、とても調子が良い。だから、ここではもう無理だ。場所が狭すぎる。順調すぎてすでに困っているよ。どこで修行をつけようか。」
「え、そんなに。」
「優秀すぎて困ったよ。威力と、安定感は申し分ない。だから、広い場所での修業は後回しにして。先に座学と操り方を習得していこう。」
「操り方ですか。」
「そう。威力の調整や、風の向きなんかを自分で自由に操る練習をしていこう。」
「わかりました。」
「じゃあ、今日はもう一回。今と同じように、上まで大きく風を巻いて。さっきより長い時間維持してみて。私が声をかけるまで、できるだけ維持するんだ。」
「わかりました。」
「じゃあ、頑張って。」
そういうと、先生たちは、家の中へ入ろうとする。
「え、あの、先生?」
「ああ、ごめん。さすがに風がきつすぎてね。大丈夫。窓から見てるから。」
そう言って、中に入り窓から顔を出す。笑顔で手を振っている。
「なるほど。そうか。」
独りぼっちになり、ちょっぴり不安だけど。
まあ、大丈夫!
「よし!」
今度は一気に風をおこし、葉っぱは高く舞い上がる。
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