踊り子の魔女 第四十三話:氷の王冠
これが、転移門。
あまりにも、この場所に似つかわしくない。重厚感や、恐れを感じるような、大きな扉があった。
誰が作ったのか、こんなに大きなもの。
「行くよ?マリー?」
「は、はい。……このまま入るんですか?」
「入るというか、通るんだよ。本当にただの扉と変わらないよ?」
「いや、でも、向こう見えないじゃないですか。」
「そうだけど、通れるから、通れるとしか言えないんだ。私は空間魔法をよく知らないから。」
「空間魔法。」
「いいから行くよ。」
手をつかまれて、引っ張られた。自分の一歩で行こうと心の準備をしていたのに。
引っ張られた拍子に、転びそうになり、そのままドアの中へ入る。入ったと思ったら先生に思いっきりぶつかった。
「大丈夫かい?」
「大丈夫です。先生こそ、大丈夫ですか。ぶつかってすみません。」
「いや、私が引っ張ったんだ、ごめんね。けがはないよね?」
「はい。」
顔を上げる。と、大きなお城の中にいた。
完全に、見逃した。転移門の中を。というか、中なんてものが存在したのかわからないくらい、あっという間だった。
きょろきょろと周りを見渡す。何人かの魔法使いたち。
綺麗なツボが飾ってる。よくわからない絵や、見たことない人の絵。それにとにかく天井が高い。大きなシャンデリアがぶら下がってる。
『なかなか、立派な建物ね。』
シェシェが隣でつぶやく。
「?いきなり建物の中なんですね。」
「そうだよ。外は雪だからね。」
「ゆき??!雪ですか?」
「そうだよ。山の上で寒いっていうのもあるけど。どうやら雪の妖精が多いっていうのが一番の理由みたいなんだ。」
「ゆき、見たいです。お願いします!」
「わかったわかった。やることやったら外に出よう。」
「やった!ゆきゆき。」
人生初の雪!ここで出会えるなんて嬉しすぎる。
「魔術師の登録をしたいんだけど。」
「かしこまりました。奥へどうぞ。」
先生が受付の人に話しかけ。奥へ案内された。
「では、こちらでまず、魔力の測定をします。」
「魔力の測定?ですか。」
「はい。基本的にはあり得ませんが、万が一魔力の無い人が登録されないように、最初に検査をさせてもらっています。」
そう言って、大きなガラス玉が目の前に差し出された。
「手をのせてください。」
両手をそっと、ガラス玉の上に置いた。
綺麗な緑色に光った。
「ありがとうございます。精霊士の方ですね。」
「では次にこちらの石を握って、魔力を込めてください。」
「魔力を込める??そんなこと、やったことないです。」
「大丈夫、風を出した時みたいに、手に集中して力を込めればいいんだよ。」
先生がアドバイスをくれて、その通りにやってみる。
が、何もない。え、恥ずかしい。どうしよう。
「大丈夫です。これで完了です。」
え、本当に?何にもできてないけど。
「では、お名前と、出身地、その他空欄を埋めていってください。」
言われるがままペンを受け取り、書き込んで行く。
「マリー様ですね。それでは、諸々確認をして、身分証をおつくり致しますので、しばらくお待ちください。二時間ほどで完成しますので、それくらいを目安に、受付にお越しください。」
「ありがとうございました。」
お辞儀をして、先生と部屋の外へ出た。
それにしても、思っていたより簡単だった。
「先生、なんで私が精霊士ってわかったんでしょうか?」
「それはね、まず、水晶が緑色に光ったから。あの玉は触れた魔力の特性で、色が変わるようにできているんだよ。それとから、精霊を連れているから、っていうのもあるよ。」
「え!精霊が見えてるってことはあの人も精霊士?ですか?」
「そうじゃないけど、近年では、精霊の数も以前より回復してきていてね。普通の魔術師たちも見えるようになってきているようなんだ。古書によると、昔は精霊はほとんどの人間に見えていたらしいからね、ありえない話ではないと思う。」
「そんな、やっぱり都会に出てくると、知らなかったことに出会えてうれしいと同時に。私の故郷では、情報が遅れていたことを痛感します。」
「ははは。それは仕方ないよ。これからどんどん勉強していこうね。」
「はい。」
本当に、自分の知識の乏しさに頭をもたげるしかない。どんどん勉強して、いっぱい色んな知識を手に入れるぞ!
一人ガッツポーズをとり気合を入れる。
「マリー、時間があるから、外に行こう。雪を見たいんだろ?」
「!!はい!」
くるっと振り返り、ドア付近にいる先生のほうへ駆け出す。
雪!雪!
***
どさ!
雪の中に倒れこんだ。いつかの絵本で呼んだ、天使をやってみようと思ったが、冷たすぎてあきらめた。
寒い。寒すぎる。わかってはいたけど、こんなに寒いなんて。一面真っ白で、もはやまぶしい。目が、目が、しょぼしょぼする。
なぜあんなに暑いのに、転移門の前で長袖に着替えさせられたのか。今理由が分かった。本当に同じ国なのか疑わしい。
『見てみてマリー。これ綺麗じゃない?』
ミリに呼ばれて振り向く。
ミリが作ったであろう、水の粒が凍ってキラキラとしている。
「えー綺麗!他の形も作って。」
『任せて!』
少し固まるのに時間がかかるけど、いろんな形の氷が次々と出来上がる。
「面白い!これで、王冠の形とかできないかな?」
『いいわね。作りましょう!』
二人で、氷の造形に夢中になる。
「ねえ、シェシェのサイズで作れる?」
『もちろんできるわよ。』
そう言ってミリは小さな、水の王冠を作る。しばらく固まるのを待って、出来上がるとシェシェを呼んだ。
「シェシェ!こっち来て。いいものできたの。」
先生と一緒に、私たちのことを眺めていたシェシェのほうを向く。先生の姿はなくシェシェだけがそこにいた。
『どうしたの?いいものって?』
「じゃーん。これ。いいでしょ!ほらかぶってみて。」
『わたくしが乗せてあげましょうか?』
『いい、自分でできる。っ、冷たい。』
そう言って、雪の上に置いてある、氷の王冠をシェシェが被る。
「やっぱりいい感じ!シェシェは王冠が似合うね。」
『さすがシェシェ様!お似合いです。』
『なかなかいいと思う。ありがとう。』
それから私たちは、先生に声を掛けられるまで、寒さを忘れて、デザインの違う王冠を作って遊んだ。
「おーい、三人とも、温かいお茶を用意したから、そろそろ中に入りな。」
先生に呼ばれ、王冠との別れを惜しみながら、私たちは建物の中へ戻った。
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