踊り子の魔女 第四十二話:愚か者には鉄槌を

 「ありがとうございました。」

各方面にお辞儀をして、御礼を言う。

大きな町だからか、以前に比べてたくさんの人に囲まれるようになった。嬉しい反面、少し恥ずかしい。こんなにたくさんの人に注目されたのは初めてだ。もっと良いものを見てもらえるようにこれからも、たくさん練習していこう。

ダンスが終わり、人々が去っていく中、先生が一人の男の人を捕まえた。

「お兄さん、その、今隠したもの見せてくれないかな?」

口調は優しいけど、どこか冷たい微妙な笑顔。

「な、何ですか。嫌ですよ。」

「お兄さん、今、うちの子のこと撮ってたでしょ?悪いんだけど撮影の許可してないんだよね。だから、消してほしいの。だから見せて。」

「撮ってませんよ。なんですか、言いがかりですよ。」

「確かに、言いがかり化の可能性もあるけど、うちの子はまだ子供だから、万が一があったら困るのよ。だから確認させてほしいんだよね。」

「撮ってませんてば。証拠ないですよね?」

「ないけど、不安の種は取っておきたいから、お願いしてるんですよ。悪いけど、私、いつまでも優しくお願いするタイプじゃないから、それだけは先に言っておく。強硬手段をとるのに抵抗ないから。」

「それは、暴力にものを言わせるってことですか?」

「それもあるけど、私が行ってもダメなら、憲兵のところへ連れて行って、盗撮をした可能性があるって訴える。」

「僕は男性で、あなたは女性だ。力で勝てると思ってるんですか。それに私は盗撮はしていません。」

「はあああ、往生際が悪いなぁ。じゃあ、宣言通り、力業で。」

笑顔が消えて、スッと真顔になる。

次の瞬間、先生の周りに水が集まる。

「ですから、どうせっっっ!な、なんですか、あなた魔導士!!魔導士が!一般人に、こんなことしていいんですか!!!」

「……。」

「聞いてるんですか!……この、くそばばあ!」

「そうだよ?私は、あんたよりかなり年上だ。目上の者は敬いな。」

そう言ってシンシアは、男の体を、大きな水の球体で包んで持ち上げた。

「はなせ!このくそ野郎!」

「だまれ、小僧が。死なないように顔だけでも出してもらってるのを感謝しな。出さなきゃうるさくないのに。」

いつになく、低い声で男を黙らせる。

男を水で捕まえたまま、シンシアはどこかへ向かう。

後ろでぼーっと見ていたマリーは、荷物を持ってい急いで後ろについていった。


***


「先生、どこ行くんですか?この人もつれて。」

「俺は行かねえ!はなせ!」

「憲兵のところだよ。マリーを盗撮してたんだ、黙って消せば穏便に済ませたものを。愚かだねえ。」

「とう、さつ?って何ですか?」

「おや、マリーはビデオを知らないのかい?簡単に言うと、実際の光景を映して残せる技術があるんだよ。動く写真みたいなものさ。」

「写真が動くんですか!面白いですね。見てみたいです。」

「機会があったら使ってみるといいよ。それで、盗撮というのは、許可されていないのに、勝手に人のことを撮影することだよ。」

「気持ち悪いですね。この人。」

「そうだろう。でも暴力で解決するのはよくないから、憲兵のところに行って、憲兵に取り締まってもらうのさ。」

「そうなんですね。さすが、先生です。ありがとうございます。」

「大事なマリーに対して、盗撮なんて許せないからね。」

後ろで、ぎゃあぎゃあと男がわめいているが、無視して話を続ける。

『きもい人間ね。さっさと口をふさげば?そうしたら、二度と呼吸できなくて静かになる。』

『そうですわ。あんなの、優しくする必要ないわよ。』

「殺すのはダメですけど、しかるべき処罰はしっかり受けさせたいですよね。」

『あれに慈悲は必要ない。』

『そうよそうよ。こんなことに時間とられて。迷惑よ。』

「だから、さっさとこの男を、憲兵に渡して、映像を消して、ソフィア山へ向かおう。」

思いがけない展開で、無駄に時間を使うことになったが、マリーはビデオという面白いものに出会い、内心ちょっぴり嬉しくなっていた。

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