踊り子の魔女 第四十一話:半伝説の精霊
一日しっかり休んで、体力も全快。
二日ほどの旅?しかも、ふもとまでランセの町らしく、食事も宿もその場で済ませるとのことで、荷物は少なく、歩きやすい。
宿代を稼ぎ、修行にもなる。というわけでダンスも踊りながら行くことになった。
先生と出会ってから、踊るときに笛を吹いてくれるようになって、見てくれる人が増えた。
音ってすごいなぁ。やっぱり見栄えが良くなるよね。事実収入もよい。へへ。
それに、なんというか、体が軽いというか、血の巡りが良いというか。なんか調子よく踊れる。
これは、また体調を崩すのではないかと思い、先生にすぐに相談した。
「先生、なんか調子が良くて踊りやすいです。このままだと、またやりすぎてしまいそうです。とにかく、元気なんですよ、踊ってるときも。」
「それは、魔力が体になじみ始めたころによくある症状だよ。今まで使っていなかった魔力という余力も使えるようになって、元の体力が支えられるようになったから元気に感じるんだ。慣れたら、それが当たり前になって、体が状態を覚えるから大丈夫だよ。あと、無理はしないようにね。」
「もちろんです。そんなすごいことが起こってるんですね。」
「あと、気分がいいのは、シェシェと呼吸が合っているからだと思うよ。精霊の力で魔力の底上げがされるのと同時に、風や水の精霊との技を使うと、なんとなく清涼感を感じるからね。」
「親和性が高まったってことですね。嬉しい。」
「偉い偉い。ちゃんと毎日コツコツ頑張ってる証拠だよ。この調子で目指せ一流の精霊士!」
「一流って、遠そうですね。」
ダンスを終えて、荷物をまとめ歩き始める。
話は、昨日私が読んだ図鑑に移っていった。
「昨日、精霊の図鑑を読んだんですけど、精霊ってたくさん種類がいるんですね。まだ見つかってない精霊もいるかもってことも書いてありました。」
「そうだよ。ここにいるミリや、シェシェは、四属性の精霊だから、一番多い精霊だ。精霊は自然から生まれる。自然の魔力からね。だから、実はね、理論的には多くの魔力に触れたものから精霊が生まれることもある。」
「え、人工的にってことですか?!」
「ははは!人工的にか、面白い表現だね。別に意図的に作るわけじゃなくて、多くの魔力がたまる場所なんかには、自然的な魔力の力がない場所でも、精霊を生み出せるってことだ。」
「魔力が、たまる。」
「もちろん、人工的に作ることもできるだろうけど、今回言いたいのは、多くの魔術師が長い時間存在している場所のことだ。」
「魔術師が、たくさん。魔術師協会!ですか?」
「あー、ちょっと違う。確かに多くの魔術師が集まるときもあるけど、常にたくさんいるわけじゃないからね。マリーも行ったことある場所、エピス図書館だよ。」
「!おとといの。あそこそんなにすごいところなんですか?いや確かに、すごいところですけど。そういう事ではなく……。」
「わかってるよ。あそこでは昔、花の精霊が生まれたっていう逸話が残っているんだよ。」
「え!本当ですか。じゃあ、帰ったら会いに行きたいです。」
「それは残念だけどできないんだ。もう居ないみたいなんだよね。だから、半分伝説みたいになってる。でも実際、長寿種の魔術師たちは会ったことあるらしいから、本当だと思うよ。」
「あ、会えないんですね。伝説の精霊。」
「もう何百年も前だから、仕方ないよ。これからどんどん精霊に出会っていけばいいさ。」
『そうそう、それにマリーには私がいるじゃない。』
「確かに、そうだよね。うん、シェシェがいるもんね!」
『そうよ。どんどん新しい精霊に会うわよ。』
「もしかして、また新しい精霊が生まれたりするんでしょうか。」
「可能性はあると思うよ。少なくとも、精霊が生まれるだけの魔力があそこにはあるからね。」
「うわー、楽しみだなぁ。……結局、その黒い花って、何の精霊なんですか?花の精霊ですか?」
「正解。」
「図鑑には、生まれた植物の名前で呼ばれることが多いって書いてたんですけど、その黒い花はなんていうんですか?」
「ごめんね、そこまでは知らないんだ。それに花の精霊っていうのもどこまでが本当か、私も詳しくはないんだよ。」
「そうなんですね……。ふふ。でもなんだか、まだ見ぬ精霊が、たっくさんいるって思うと、これからがとっても楽しみです。」
「そうだね、これからマリーはたくさんの精霊に出会って、たくさんの知らないことに出会うね。だから、前情報もしっかり入れていこうね。」
「はい!」
ワクワクする、夢のような伝説の話を聞いて、精霊の神秘性や、自分のこれからに、私は胸を高鳴らせた。
*****
『あの、シェシェ様。さっきの、あの花の精霊って、あの子ですよね?』
『ああ、黒花ね。一時は、精霊界であんなに噂になったのに、ぱったり聞かなくなったとは思ってたの。』
『まさか人間界で、伝説扱いされてるなんて。』
『なに、あんた、会ったことあるの?』
『ありませんよ。シェシェ様はどうなんです?』
『私もない。ただ有名な子だったから知ってるだけ。』
『黒花。結局どこに行ったのかわからないままなんですね。』
『精霊界には一度も来たことのない変わり者。』
『今どこで何をしているんでしょうね。』
『興味ない。』
『私は興味あります。まさかここでもう一度あの名前を聞くなんて思ってませんでしたから。』
『名前って。名前知ってるの?』
『いいえ、黒花としか。いやぁ、一度みてみたいですよ。』
『そう。まあ頑張れば。』
コメント
コメントを投稿