踊り子の魔女 第四十話:ランセに到着
え……。あれに登るの?
ランセに着いて間もないのに、次の行き先を教えられる。指をさされたその先を見ると、遠くに大きな山が見える。遠い。遠いのにあれだけ見えるということは、大きい。
魔術師協会がある場所ということで、神秘的な場所だと思っていたが。
あれだけ高ければ、人はあまりいないだろう。
でも、あの、あれに登るなんて……。できるのか。いや、できないのでは?
悶々と一人で悩む。あんなに高い山は見たことがない。もちろん上った経験もない。
「リー。マリー、聞いてるかい?」
「あ、すみません。山に気を取られていました。」
「はは、そうだろうね、ソフィア山は大きな山だからね。」
「山、というには、だいぶ尖ってて険しそうですけど。」
「まあまあ、大丈夫さ。ちゃんと行けるから。とにかく、今日と明日はしっかり休んで、明後日、朝一で出発するからね。」
「わかりました。」
「それじゃ、まず魔術師協会のランセ支部へ行こうか。」
「え、支部があるんですか???」
だったら、そこで登録を済ませたい。という言葉は飲み込んだ。先生の、弟子には色んなものに触れてほしいという気持ちを大事にしたい。
「何しに行くんですか?」
「宿を借りに。短い期間一軒家を借りるなんて、他じゃそうそうできないからね。」
「ああ!どうやって一軒家を借りているのか謎だったんですけど。そういう事だったんですね。魔術師協会ってそんなことまでしてくれるんですね。」
「そうそう。魔術師達のための、魔術師協会たちが運営している、万事屋みたいなものだよ。何かあれば、何でも相談してみるといい。」
「すごい。」
とまあ、そんなこんなで、ランセ支部に向かう。
『それにしても、支部で登録できるなら、やっぱり無理してソフィア山に行く必要ないんじゃないの?』
シェシェ、ここでそんな、私の思っていたことを言うなんて。
微妙な気持ちになりながら先生の返答を待つ。
「そうだけど、行こうと思わないと行かない場所なんだよ、あそこは。支部で事足りてしまうからね。せっかくこんなに近くに来たのなら、今行ったほうが絶対にいいよ。」
『そう、でも、なんかあの山を登るって可能なの?』
そうそう、それは私も思ってた。
「大丈夫だよ。二、三日もあれば着くから。」
『本当に?とてもそんな短い期間じゃたどり着けそうにないけど。』
おっしゃる通り。
『山のふもとからは、転移門で移動できますわ。だから大丈夫です。』
それは、知らなかった。転移門って本当にあるんだ。
『なるほど、そうなのね。』
もっと早く教えてほしかった。そしたらあんなに悩まなかったのに。
「だから、大丈夫。あくまで麓に行くまで歩けばいいだけだから。さあ着いたよ、家を借りてすぐに休んでしまおうか。」
*****
家に到着。とは言ったものの、村からはあっという間にランセに着いて、なんだか休むには微妙な時間だ。
今すぐ寝るには早いけど、何かを見に行くほど時間はない。でも、まだそんなに疲れも出ていなくて、時間がもったいない気がした。
「うーん。」
『マリー、よかったら図書館行かない?』
「図書館あるの。行きたい。先生いいですか?」
「いいよ、行こうか。」
ミリが図書館に行こうと言ってくれたおかげで、ちょうどよい暇つぶしが出来た。
『私は家に残る。行ってらっしゃい。』
「わかった。」
シェシェは家に残るということで、三人で出かけることになった。
「私の村には、精霊の本がほとんどなかったから、たくさんあるといいな。」
『何でもあるわよ、ここの図書館には。』
「なんでもって、なんでも??」
「そうだね、魔術師たちが読みたいものはほとんどあるから、無いものは無いんじゃないかな。」
「そんなにですか、そんなに大きいんですか?」
「イーリヤは、国土も広いし、歴史の長い国だ。だから、国自体に何でもあるんだよ。」
「国にも、なんでも、あるんですね。」
恐るべしイーリヤ。
『着いたわよ。』
ミリに言われて顔を上げる。
でか!ひっろ!
なんでもあるって、誇張じゃないんだ。
中に入ると見渡す限りの本棚。左右がどこまで続いているのかわからない。二階、三階、四階……。
階を数えながら頭を上げていくと、天井が目に入る。
四人の人間?と、真ん中に一人。誰だろう。故郷のステンドグラスなんてガラスなのか疑うくらい、綺麗なステンドグラスの絵があった。
しばらく眺めた後、首の痛みで我に返る。
誰なんだろう。今度時間があったら調べよう。
先生とミリはすでに自分たちの目的のものを見に行ったのか、いなくなっている。
「さーてと。精霊精霊。」
まあ、大体、魔術書の近くにあるでしょ。
と、さっきまでのんきに思っていた自分が情けない。広すぎて、行っても行っても見つからない。
えーい。こうなったら、とにかく突き進むしかない。
呪文集、生活魔法、水の魔法、魔法工学……。進んでも進んでも、ほんとにない。世の中にはこんなにも魔法が存在しているか。
思わず、そちらに気を取られそうになるくらい、面白そうなジャンルがたくさん。
はぁ、聞こうかな。なんて思っていたら、見つかった。
精霊、精霊術。すごい、見える範囲で三つの棚が精霊についてだ。
「どれがいいかな。明日一日借りるだけだし。一冊でいいかな。……あ。」
【世界の精霊図鑑】。
目に入った本を取る。パラパラとめくってみた、どうやら色んな種類の精霊の図鑑のようだ。
これにしよう。一日で何か読むのも無理だし、これなら絵を見るだけでも楽しそう。
本を閉じて入り口近くの受付に向かう。
確か、先生が借りてくれるって言ってたから、受付で待ってたらいいよね。
一階に降りて、受付近くの椅子に座り、図鑑をめくりながら先生を待った。
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