踊り子の魔女 第三十九話:暑くなってきた
暑い。
歩いていると、じんわり汗をかく。もうすぐイーリヤは暑い時期に入るから、これからますますしんどくなってくるのかな。
旅に出たころは長袖だったのに、だんだん生地が薄くなって、今では昼間は半袖だ。
幸いなことに、今日泊まる村で一泊したら、明日にはランセに到着するらしい。
本格的に暑くなる前に到着できて本当に良かった。
イーリヤは涼しい時期のない国らしいから、これからは暑くなる一方だ。慣れない気候で体調を崩さないように。しっかり気を付けないと!
植物がよく育つイーリヤは、精霊も増えやすい。
ランセは首都だから、発展していてきれいな街らしいけど、それ以外の場所は意外と田舎で、自然が多く、そのおかげで精霊が多いらしい。
なんと、世界にいる精霊の三分の一はここで生まれているといっても過言じゃないとのこと。
特に、イーリヤにある、世界一大きな湖には、水の精霊あふれているとのことで、ぜひ一度行ってみたいと思っている。
ランセには、しばらくの間、住むくらいの長さ滞在するらしい。
沢山の精霊と出会いやすい環境ということもあるが、ランセには世界的にも大きな図書館があり、魔法使いもよく利用しているらしく、読みたい本は大体そろっているそうだ。
だから、ここで私のことをみっちり育て上げて、一人前にしようというのが先生の狙いだ。
「先生。ランセに長く滞在するのはいいんですけど、なんとなくの、期間の目安はないんですか?」
「特にないよ?強いて言うなら、マリーが私の教えられることを、全部をできるようになったらだ。」
「そ、そんなにですか。それは結構かかりそうですね。」
「そうでもないと思うよ。最初のころに言ったことあると思うけど。マリーには、精霊士としての才能がある。現に、今までの修行、実は私が思っていたよりも早くこなしているしね。前の修行の、風を自分で出すやつは、ランセに着いてから、出来るようになってもいいと思ってたくらいだからね。」
「本当ですか!私、ちゃんと出来てるってことですか?」
「出来てる出来てる。本当に育て甲斐があるよ。きっと、あっという間に私には教えられることがなくなってしまうと思う。弟子をとってきたとは言え、私は研究なんかをしているわけじゃなく、長く生きてるおかげで知識が多いだけだからね。そのうちもっと学びたくなったら、他の手段も用意してあげようと思ってるくらいなんだから。」
「他の手段??」
「まあ、それはその時になったら。それより、ランセには長く滞在するって言ったけど、着いたら、一旦行くところがあるから。悪いけど、休まず次の日には出発するよ。」
「行くところですか?どこです?」
「魔術師協会本部。」
「まじゅつしきょうかいほんぶ……。あ、前に話していたところですね。」
「うん、魔術師を名乗る者たちが所属している団体だよ。本部がイーリヤのソフィア山にあるんだ。」
「えっと、確か、登録するんですよね?」
「そうそう。無免許で精霊術士を名乗っても、あんまり信用ないからね。」
「信用問題なんですね。それに免許があるんですか。……絶対登録しないといけないんですか?」
「法的な拘束力はないから、絶対ではないけど、便利だしみんなしてるよ。それに一応は、魔術師は登録するのを義務付けられてる。あと、免許っていうのは私が勝手に言ってるだけで、ただ登録証明の魔法石が渡されるだけだよ。」
「魔法石!かっこいいですね!」
「そうだね、マリーも手に入るよ。」
「やった!それで、あの、なんで本部に行くんですか。なんか、緊張します。」
「別に支部でも登録はできるけど、時間がかかるっていうのと、せっかくイーリヤに来たんだ。行ける時に連れていきたいと思ってね。お城みたいに建物が綺麗だから、マリーもきっと気に入るよ。」
「山に、お城。昔話みたいでいいですね!ぜひ見たいです。でも緊張はします。」
「そんなに緊張しなくても、私が一緒にいるから大丈夫だよ。」
「そうですよね。先生も一緒にいるんですよね。それで、そこまで行くのに、どれくらいかかるんですか?」
「そうだね、一日、二日で向こうにつくかな。とは言え、これから暑くなるから、あんまり焦らずにゆっくり行こうと思っているよ。目的地のランセには着いてるわけだし。」
「そっか、そういえば、ついに明日ランセにつくんですね。楽しみです!」
「そうだね。さあ、村まであと少し、頑張るよ。」
「はい!」
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