踊り子の魔女 第三十六話:知恵熱出ちゃった
『うーん。⋯⋯マリーおはよう。』
「⋯⋯。」
返事がない。どうしたんだろう。
顔を覗き込む。するとマリーは辛そうな顔をしながら、短く呼吸をしている。
『マリー??』
「大丈夫。」
顔に触れる。熱い。熱が出てるんだ。まったくもう、無理するから。
『待ってて、シンシアを呼んでくる。』
シンシアを呼びに行く。
山登り中、調子に乗って練習し続けるからだ。⋯⋯、そういえばシンシアに、マリーを甘やかすなって言われてた。私がちゃんと止めておけば。はぁ。
マリーが倒れた原因が、少しは自分にある気がする。身内に甘くなる癖、良くないかなぁ。
悶々と考えながらシンシアの元へ向かう。
『おはようシンシア。急で悪いんだけど、マリーが熱出した。看病したいんだけど。』
「!マリーがかい?全くあの子は。あれだけ言ったのに無理をするから。まあ、今回しっかり止めなかった私にも責任はあるか。今後こんなことが起こらないように、しっかり治して、反省させなくちゃね。」
『まあ、私も、気をつけるようにする。』
「そう言ってくれてよかったよ。」
『それにしても、マリーは何かあるごとに、体調崩してるけど。このままで大丈夫なの?』
「それはまぁ、一度何が原因が突き止めないとね。まあ、色々一気に経験したせいで、パンクしたってところだ。知恵熱みたいなものさ。」
『なるほどね。』
マリーの体調管理について話しつつ、二人で必要なものを用意して、マリーの部屋へ戻る。
食事については、宿の人にお粥をお願いして、食べられる分を食べさせることにした。
『マリー、大丈夫?食べられそう?』
シンシアに汗を拭かれながらマリーが答える。
「少しなら。ごめんなさい、先生。大丈夫だと思ったんですけど。シェシェもごめん。」
『まあ、それについては後で。今はとにかく治すことをを優先して。』
「そうだよ。色々言いたい事はあるけど、それは元気になってからだ。」
とにかく、今は回復に専念するよう言い、お粥をたべさせて、水を飲ませる。
顔が熱いということで、ミリがおでこに、冷たい水の塊を作ってくれた。
『本当は、雪の精霊とかの方がいいんだろうけど、まあ、今はこれだけでもあったほうがましよ。』
『ありがとう。』
『シェシェ様から、感謝されるなんて!任せてください、全身全霊で冷やします。』
『そんなに冷やしてどうするの?それはそれで良くない。』
『そ、そんな。冗談ですよ。そんな真面目な顔で言わないでくださいよ。』
「二人共、静かに。マリーが眠ったようだ。」
ミリとのやり取りに気を取られている間に、マリーはあっさり寝てしまったようだ。
「お粥もほとんど食べられたから、明日には治ってるだろう。ただの疲れだろう。」
『そう。良かった。じゃあ部屋を出ましょう。』
そう促し、3人で外へ出る。
『それにしても、こんなに毎回体調を崩していたら、この先やって行けないんじゃない?』
「まあ、そうだね。でも今回は、ただの体調不良じゃないよ。恐らく、突然身体中に魔力が巡ったせいで起きた発作。つまるところ、魔力酔いだろう。」
『そんなところだろうと思いましたわ。』
『ああ、なるほど。確かにそれなら納得。』
「それに、最初は、まあ、私のせいで緊張と恐怖心に襲われて倒れて。二回目は単なる船酔い。三回目の今回は、魔力酔い。どれも明確に原因がわかっているし、対策は取れる。それに、これだけの経験をしたから、この先も徐々に慣れていくさ。」
『そう言われれば、そうか。⋯⋯マリーの事、心配なくせに、甘やかしちゃうの。何とかしないとね。』
『そうですよシェシェ様、その優しさを一部、私に向けてくださいな。』
『⋯⋯。』
『な、何か言ってくださいよ。』
『⋯⋯。』
『⋯⋯。』
「とにかく、シェシェが、少しはマリーの為に厳しくなれることを祈っているよ。さあ、マリーの熱で、今日は動けなくなったから。休暇だと思って、明日までゆっくりしようじゃないか。」
『私は、マリーのそばにいるから。』
そう言ってマリーの部屋へ向かう。
『シェシェ様、あの、何か⋯⋯。』
ミリのくだらない話には付き合いきれない。
私はいつでも、マリーのそばにいたいの。
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