踊り子の魔女 第三十二話:初めての他国

 「着いたー!」

船べりから遠くに見える、大きな山。国全体を囲むかのようにそびえたつあの山は、グアルド山というらしい。右を見ても、左を見ても、山の端が見えない。
船が着港すると、私とミリは、勢いよく下船した。

「うわー、ひっろいね。」

『そうね。この港はイーリヤと他の国をつなぐ玄関口だからね。当然人も、物もたくさんよ。』

「さてさて、楽しんでるところ悪いけど、これから山のふもとの村を目指してすぐに出発するよ。もたもたしてたら、暑い時期が来てしまう。」

あれから調子よく船は進み、次の日の午前中に私たちは、イーリヤに上陸することが出来た。
この調子で、できるだけ早く進み、暑い時期が始まる前には、首都ランセに着く予定だ。

「村に着いたら、一泊してしっかり休むんですよね。」

「そうだよ。ふもとの村に着くまでに、登山に必要なものはそろえてしまうから、ついたら、一日しっかり休むよ。」

「わかりました。しっかり休みます!」

「それから、今日からまた修行を再開するよ。船の上では座学をしたから、また実践だ。今はランセまでを急ぐから、そこまで辛い修業はしないけど、基礎をしっかり身に着けてもらうからね。」

「はい!」

私が元気よく返事をすると、先生はにっこりと笑った。

「まずは、マリーの意思で風を起こせるようになるのが目標だ。大きさは気にしなくていい、とにかく風を起こせるようになることを目指してね。」

「わかりました。具体的に何をすればいいんでしょうか?」

「船の上でも言ったけど、精霊術の強さは、パートナー精霊との親和性。つながりの強さで決まる。だから、マリーとシェシェには、これから寄る町や村で、以前のようにダンスを披露してもらう。シェシェが見えるようになったのは、マリーとシェシェの親和性が上がったから。つまりダンスをしながら、お互いに意識をすることで、より親和性が上がるってこと。」

「なるほど!すでに一度やってたんですね。」

「そうそう。親和性の高め方は、精霊士と精霊ごとに違う。マリー達はすでに、素晴らしい方法を持っているから、それを使えばいい。忘れないでねマリー、精霊術の基本は、親和性だ。これが出来ていない者は、精霊士とは言えないからね。」

「わかりました。しっかり覚えておきます。」

「よろしい。ついでに、旅費も稼いでくれると嬉しい。マリーも見習いとはいえ、今は精霊士。しっかり仕事をするのは大事なことだ。」

「もちろんです。頑張ります。」

そうして、なんやかんやと話しながら歩いていると、小さな村に着いた。
今から次を目指しても、時間が中途半端なので、今日はこの村に泊まることになった。
私とシェシェは、早速、少し開けた場所を借りると、ダンスを始めた。
あの時のように、呼吸を感じる。耳を澄ませて、自分とシェシェのリズムに集中する。以前より、なんだかシェシェを感じるようになった気がする。
独りよがりではない、二人で作る、二人だけの呼吸を意識して。
同時に、ダンスの楽しさを感じる。シェシェの楽しさも感じる。シェシェが見えるようになった今、目を開けて、視線でシェシェを追ってみる、自然と次にどこに手を伸ばすか決まり、どこにステップを持っていこうか決まる。
あぁ、今二人で踊れてる。
そう確信できるほどに、私たちはお互いの呼吸をつかめてきているのがわかった。

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