踊り子の魔女 第三十話:初めての座学

 「ううう。」

きぼぢわるい。無理だ、こんなの。
昨日はあの後、気持ち悪すぎてすぐに寝た。そして、今現在、ご飯を食べている最中に気持ち悪くなってきたのだ。

「ごめんごめん。昨日あのまま寝たから、渡すタイミングを逃してたよ。」

そう言って差し出された先生の手には、小さな袋があった。

「この袋ごとマリーにあげるよ。酔い止めの薬だよ。」

私は、袋を受け取り、中から黄色い粒を出す。

「一日ひと粒だよ。それ以上飲んでも意味はないし。必要ないから。」

「ありがとうございます。」

私は、力ない声で返事をし、それを水で流し込む。
とはいえ、すぐには効かない。

「今日は、マリーの調子もよくないし、このまま部屋に居ようか。あと二日ほどでイーリヤに着くし、今日は予定通り、座学をしよう。」

そういうと、先生は紙とペンを出し、色々と書き始めた。

「まずは属性。精霊には、火、水、土、風の四つの基本属性がある。あくまで人間が区別するのにつけてる名前だ。それに加えて、花の妖精、雪の妖精、宝石の妖精なんかがいる。でも、自然から生まれるものだから、どれくらいの精霊がいるのか、今でもわかりきっていないんだよ。」

「ということは、この先また新しい属性の精霊に出会うかもしれないってことですね。」

「そういう事。それから、それぞれの基本属性には長となる精霊がいる。火のサラマンダー、水のウンディーネ、土のノーム、風のシルフ。シェシェはシルフの系譜なんだろう。」

『……まあ、そう。でも何年も親族には会ってないし、連絡も取ってないから。この話はいいから続きを。』

「じゃあ次だ。このさらに上、すべての精霊のを束ねる存在、精霊王がいる。」

「精霊の世界にも、王様っているんですね。」

『そうよ。でも、人間界とは違って、上位の精霊たち以外は、そんなに序列とかの概念はないのよ。』

『まあ、精霊によるけど。』

「そうなんだ。」

「これが、精霊たちの世界の大まかな成り立ちだ。次は私たち精霊士についてだ。そもそもマリーは精霊士の血筋なのかい?」

「はい。祖母が。でも実際に会ったことはありません。」

「そうか。精霊士はね、才能なんだよ。そして、持って生まれた精霊との親和性の強さで、なれるか、なれないかが決まっている。精霊士から精霊士は生まれやすいが、これも必ずじゃないし、もちろん血縁に精霊士が全くいなくても、才能のある子はいる。」

「私は、偶然シェシェに出会えてここにいます。だから、シェシェに会えなかったら、精霊士なんて知らないままだったと思います。」

「うーん、それはないと思うよ。精霊士同士は、お互い見ればわかる。能力がどれほど強いかもね。それに精霊士は精霊に好かれる気質のようなものを持っているんだ。だから、断言できるマリーほどの強さならシェシェじゃなくても、いつか精霊に出会っていたよ。もしくは私じゃない精霊士に、出会ってた。」

『あの、ひきつけられるようなもののことね。』

シェシェがうなずいている。

「まあ、マリーはそういう運命のもとに生まれたんだよ。そして、精霊士とは、精霊の力を借り、魔法を使う人々のことを指す。つまり、大きなくくりでは、私たちは魔術師なんだよ。ちなみに魔術師も、魔法使いも、表現のが違うだけで、さしてるものは同じだからね。」

「じゃあ、私たちは魔術師なんですか?」

「半分正解。精霊と意思疎通できる人々は精霊士というんだ。魔術師には精霊は見えないから、そこには明確な違いがあるんだよ。」

「わかりました。」

「でも、精霊術も魔術の一つではあるから、精霊士は魔術師協会に所属してるんだ。」

「まじゅつしきょうかい?」

「世界中の魔術師が所属している組織だよ。出身国や種族の違いは関係なく入ることが出来る。逆にこれに所属していないと、まあ、悪くはないけど恩恵も全くないからね。」

「どんな人でも入れるってことは、私も入れるんですか?どこにあるんですか?」

「そうだよ。今はイーリヤに向かっているけど、本当の目的はさらにその先、魔術師協会本部がある、ソフィア山だ。そこへ行って君の登録をしようと思っている。」

「え、私、まだ何にもできませんよ。」

「いや、マリーはもうすでに、ダンスの時にシェシェと風を操っているじゃないか。見習いではあるが、すでに精霊士さ。」

「うわぁぁ。私精霊士なんですか。かっこいい。嬉しい。」

「そうだよ、それにね、魔術師協会に所属すると、身分証がもらえる。今君が持ってる身分証は紙だし。町を出るときに次の行き先を提出して、次の町に着いた際にその確認をして、めんどくさいが、魔術師協会の身分証は、見せればすぐに通れるし、出られる。便利だよ。」

「そんなに簡単なんですか?でもそれって大丈夫なんですか?そんなに便利なら、誰かに使われたりとかしないんですか?」

「大丈夫。本当に本人の物なのか、最初に登録するから、自分以外は使えない。」

「すごい。抜かりないんですね。」

「そうそう、っと。そろそろお昼だね。マリー調子はどうだい?」

なんともない。話をしていて気づかなかったが、今はすこぶる気分がいい。

「はい。大丈夫です、薬が効いたみたいです。」

「それはよかった。じゃあ一旦外の空気でも吸いながら、お昼ご飯としようか。」

そう言って扉のほうへ向かう先生を追いかけて、私たちは部屋を出た。

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