踊り子の魔女 第二十八話:船の上で大混乱
『だから、テームの村のほうがいいって言ってるじゃない。』
「確かにあそこも、そこそこ大きな村だ。でも少し頑張ってランセの町まで行ってしまおう。」
『でも、遠いわ。マリーはまだ小さいのよ。』
「十分行けるって。それにどうせランセには行くんだ、早く行かないと暑い時期に入る。移動するのが大変になる。」
『それは、そうだけど、でもいくら何でも山を越えて、いきなりランセを目指すなんて。マリーは、旅の経験は浅いのよ。テームに留まらないとしても、山の手前の町や村で一度は休みましょう。』
「そうか。旅を始めてまだ三か月もたってなかったんだね。そのことを忘れていたよ。ごめんマリー。」
「いえ、大丈夫です。暑くなるから早く行かないといけないっていう先生の話も。私の体力を心配してくれてるミリの話も。どっちもありがたい話ですから。ありがとうございます。」
「ありがとうマリー。じゃあ、ランセまで急ぐとして、山道の前に一泊、近くの村で休むとしよう。」
「はい。」
『ねえ、そもそもなんでそんなに急ぐの。それになんでランセなの?』
『イーリヤには涼しい時期というのはありませんから。』
「そう、今は普通の時期で、後一か月ほどで暑い時期が来る。それにランセは、イーリヤの中心都市。だから大きな図書館もあるし、魔術師もたくさんいる。どうせなら、人が多くて情報の多い場所に行こうと思っているから。つらい時期に入る前に、移動を済ませようってわけ。」
『なるほどね。』
「そういえば、シェシェは、他の国に行ったことないの?」
『私は、人間の土地の呼び方はわからないけど、いろんなところに行ったから、おそらく他の国にもいったと思う。でも海を越えようと思ったことはなかった。』
「そっかぁ。じゃあ、シェシェも新しい何かに出会えるといいね。」
『そうね。』
「昨日も思ったけど、海って独特の香りがするね。」
『ちょっと臭い。私は苦手。』
「実は私も。それに、川と違って下が全く見えないよ。落ちたらどうなるんだろう、怖いね。」
『もし落ちても、マリーくらい、すぐと助けられるわよ。』
『大丈夫、私は落ちる前に助けられる。』
「へへ、二人ともありがとう。でも落ちないよ絶対。気を付けるから、絶対。」
「おい!嘘だろ!」
「こんなのがいるなんて聞いてないわ!」
「あんなにいるのに、どうすんだよ!」
「この船は貨客船とはいえ、荷物のほうが多い船だ。そんなに護衛は乗せてないだろうね。魔術師が一人くらいいればいいが。」
「先生、今はそんなことより、逃げないと。っていうか、逃げるっていうか、どうすればいいの。どうすればいいんでしょう?!?」
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