踊り子の魔女 第十七話:田舎者への洗礼

 付け焼き刃でも、とりあえずダンスを形にし、広場で披露した。
気持ち、いつもより多めのお金を稼ぐことが出来たので一安心だ。

『よかったね。』

「うん。何とか多めに稼げたから、市場でご飯でも食べよ。」

『うん。』

カバンにお金を入れ、市場へと向かう。
相変わらず、市場はたくさんの人であふれていた。久しぶりにパン以外のものを口にできそうで、私はうきうきしている。

「シェシェ、何食べたい?」

『久しぶりのちゃんとしたご飯でしょ。私はいいから、マリーの好きなもの食べな。』

「え!いいの?本当に?」

『いいよ』

シェシェは優しく促してくれた。
私はお言葉に甘えて、肉の串焼きを2本買い、市場のはずれまで移動した。
一本をシェシェに手渡すと、串が宙に浮く。
姿が見えないから、食べ物だけが浮いて見えて、いつ見ても不思議な気持ちになる。

「どう?おいしい?」

『味が濃くておいしい。』

「よかった、じゃあ私も。」

一口食べると、濃いめの味付けが、疲れた体に染み渡った。

「おいしいー。」

思わず大きな声が出た。
久しぶりに、お肉を口にできたことがとても嬉しく、あっという間に食べ終わってしまった。
まだまだ食べたい気持ちはあるが、贅沢はできない。
一息つくと、立ち上がる。お金がある今、もう少し食料を確保しようと思い、追加のパンを買いに行こうとした。
が、その瞬間心臓が飛び跳ねた。財布がなくなっている。
やってしまった。串焼きを買えたことに気を取られて、財布を適当に腰に括り付けたのだ。
きっと誰かに掏られたか、落としてしまったのだ。

「財布がなくなった!市場に戻って探してくる。」

私はシェシェの返事も聞かずに、すぐに市場へと走った。


長い時間、同じところを何度も何度も探した。でも財布はなかった。掏られてしまったのか、落ちた財布を誰かが拾って取ってしまったのか。どちらなのかはわからないが、財布がなくなったのは現実だ。どうしよう。今度こそ本当にお金が無くなってしまったのだ。

『帰ろうマリー。』

はっと顔を上げる。シェシェのことをすっかり忘れてしまっていた。

「ごめんシェシェ。シェシェのことほったらかしてた。」

『大丈夫。お金が無くなったんだもん、仕方ないよ。でも、もう財布はないと思うから、今日は一旦、宿に戻ろう。』

「うん。」

シェシェの優しい言葉がありがたいのと同時に、自分の愚かさに、苦しい気持ちになった。
じんわりと、目頭が熱くなる。泣いてもどうにもならないことがわかっていても、出てくる涙を止めることが出来なかった。情けない。宿につき、急いで部屋へ向かうと、私はそのままベッドの中へもぐりこんだ。
この場に居ることがいたたまれない。
私はただ、声を殺して涙を流すことしかできなかった。


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