踊り子の魔女 旅支度 その七

 「よし!」

勢いよく起き上がる。
今日は朝から踊りの練習をしよう。
部屋を出て、勢いよく階段を降りて一階に降りた。

「おはよう。」

「おはようマリー、パン焼いてるわよ、ジャムは何にする。」

「ありがとう。先に顔洗ってくる。」

そう言って、洗面台の前に立つ。
鏡に映る自分の顔を見つめて、話しかける。

「本当に一緒に行くのかの確認。家族以外と一緒に生活できるか不安な気持ち。」

鏡の中の自分に、今日シェシェと話し合うべき内容の確認をする。

「大丈夫?大丈夫。」

自分で自分を励まして、キッチンへ戻った。
テーブルの上には、パンとブルーベリージャム、スープがおいてあった。

「ブルーベリージャム、一番好きでしょ。これ食べて、今日も頑張るのよ。」

「うん。シェシェにしっかり、自分の気持ちを伝えてくる。」

「そうそう。何事も聞いてみないとわからないからね。さっ、冷めないうちに食べなさい。」

母にも励ましてもらいながら、私はパンにジャムをぬった。



母が仕事に向かい、私も早速裏庭に出る。

「では、張り切って!」

大きな掛け声で気合を入れて、ポーズを取り、ゆっくりと上半身を曲げていく。
呼吸を整えて、目を閉じる。自分の身体と、呼吸に集中しながらステップを踏み始めた。

どれくらい時間が経ったのかと思い、空を見上げると、太陽がちょうど真上に来ようとしていた。どうやらだいぶ集中していたみたい。とりあえずお水を飲みに家に入る。
シェシェは来なかった。今までは午後に練習していたからそのせいかもしれない。
不安が募る。
やっぱり一緒に旅に行きたくなくなったのかも。
突然ここからいなくなるって言ったから、興味をなくしたのかも。
また、ぐるぐるといろんなことを考えてしまう。しかも悪い方に。
むしろ悪いことを探しているくらいの勢いで、思考を巡らせてしまう。

「ねえ。いる?」

外から声をかけられた。シェシェだ。
コップを置いて外に飛び出す。

「シェシェ!来てくれた。ありがとう。」

「また来るって言ったじゃん。」

「そうだね、そうだった。シェシェ、私ね話したいことがあるの。シェシェと旅に行けるのはうれしい。でも、家族以外と長い時間を過ごすことに不安があるの。気持ちに余裕がないとき、体調が悪くなったとき、シェシェと喧嘩しちゃったとき。どんな時でも、気を遣えなくなる時は来ると思う。そんな時、シェシェとはしっかり話し合える関係でいたいの。」

気が付くと、私は自分の思いを一気に吐き出してしまっていた。
でも、シェシェは黙って聞いてくれていた。

「大丈夫。わかってる。すぐに、お互い打ち解けるのは難しい。でも、今こうして思いを伝えられるだけの関係は、確かに築けてる。最初のころなんか、私全然しゃべってなかったじゃん。私も、言いたいことは言うし、マリーの気持ちも聞いていきたい。これから二人で、二人の関係性を作っていけばいいんだよ。私は、マリーのこと好き。」

「シェシェ。うう。泣くようなこと言わないでよ。でもとっても嬉しいよ、ちゃんと考えてくれて。こんなにしっかり答えてくれると思わなかった。本当にありがとう、いつかちゃんと姿を見て伝えたいよ。」

「いつか見える、絶対。」

「うん。あと、家族のこと、何度も聞いて悪いけど本当に大丈夫なんだよね?」

「うん。それは本当に大丈夫。......もし会いたいなら、見えるようになったときあってみてもいいよ。」

「え。え!本当に?いいの?」

「うん。見えるようになったらね。」

「頑張る。」

「じゃあ、今日はどうする?やめとく?」

「ううん。踊る。せっかくシェシェが来てくれたんだし。気分もとってもいいの。」

「じゃあ、今日もよろしく。」

「うん!じゃあ、せーの!」


私たちは、自分の気持ちを伝えて、お互い何を思っているのか知ることが出来た。もちろん、まだまだ知らないこともあるし、思いもしないことが起こる可能性もある。だからこそ私は、この先も、しっかりシェシェと向き合おうと、心に決めた。



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