踊り子の魔女 旅支度 その五
「日も沈み始めてるから、そろそろ帰るね。」
「暗くなってからじゃ危ないもんね。」
「今日は、本当にありがとう。」
「また来てね。旅に出るまでの間、いっぱい遊ぼうね!」
「もちろん。じゃあね。」
「気をつけて。」
「おかえり。」
「え、た、ただいま。って、シェシェ?」
「うん。明日も来るって言ったじゃん。」
「わかってる。でも、家に入る前に声をかけられてびっくりしたぁ。」
「それはごめん。」
「ううん、大丈夫。私こそ、いつもより遅くなってごめん。踊ろっか。」
「うん!」
「じゃあ、始めよ!」
「それじゃあいくよ。せーの。」
「それじゃあ、帰るね。また明日ね。」
「ごめんシェシェ。シェシェにとっても大事な話があるの。だから聞いてほしいの。」
「うん。別にいいよ。なに?」
「実は私ね。旅に出ることにしたの。今すぐじゃなくて、来年のナギ頃なんだけどね。......だから、来年にはお別れになる。」
「そっか。」
「せっかく仲良くなれたと思ったのに、こんなにすぐにお別れになるなんて。ごめんね。」
「一人で行くの。」
「うん。精霊のこととか、世界のこともっと知りたいんだ。」
「一人がいいの?」
「そういうわけではないけど。だからって、一緒に行く人がいないからね。」
「そう。私も一緒に行く。」
「......え?なんて?」
「一緒に行きたい。」
「え、でも、え??なんで?ここにいなくていいの?それに、家族とかさ、いるでしょ?」
「まあ、生みの親はいるけど、別に私も成体だし。何しても大丈夫だよ。」
「そういうことじゃなくて、その、親御さんは心配するでしょ。こんないきなり決めたら。」
「それはない。そもそも何年も会ってないし。」
「それって、どういう。」
「さっきも言ったけど、私は成体で、幼体じゃないから、別に何をしてても問題はないの。多分マリーは、私の親が心配することを心配してるんだと思うけど。精霊って、成熟すると基本個体で存在するの。」
「じゃあ、なんというか、家族で住んだりはないの?」
「別に、してる精霊もいるし、個々で生きている精霊もいる。親は子を愛してるし、嫌ってるわけじゃないけど、個が個であることを他の種族よりは区別してるって感じなの。」
「なるほどね。なんとなく理解できた。で、本当にくるの?いくら家族と住んでないとはいえ、この場所から離れるのは寂しくないの?」
「全然。そもそも生まれ故郷はここじゃないから。」
「え、ここじゃないの?」
「そう。なんとなくいたら、偶然マリーに出会えた。だからそういう意味では、ここは意味のある場所かもしれない。」
「そっか。じゃあ、何度も聞くけど。本当に一緒に来るんだね。私、そんなにしっかりしてないし、寝てるとき寝言いうし、迷惑かけることもたくさんあるよ?本当にいいんだね?」
「いいよ。そんなたかだか10数年しか生きてない人間に憤るほど、狭量じゃないから。」
「う、うん。ありがとう、でいいのか?」
「じゃあ、とりあえず明日も来るから。じゃあね。」
「え、あ、気をつけてね。」
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