踊り子の魔女 旅支度 その三

  「こんにちは。」

「こんにちは。今日は時間ぴったりですね。」

神父様に言われて時計を見ると、本当に1時ピッタリだった。

「はは。この間は早く来すぎたので、今回は気を付けました。」

「それはありがとうございます。」

「それでは、今日の勉強を始めましょうか。」


「お疲れ様です。お茶をどうぞ。」

「ありがとうございます。いただきます。」

カップに口をつけ、一息つく。
一呼吸おいてから、私は口を開いた。

「神父様、今日はお話があるんです。」

「何ですか?......いつにもまして真剣な表情ですね。」

そう言って、神父様はカップを机に置くと、穏やかな表情でこちらをしっかりと見てくれた。

「私、旅に出ることにしました。」

「そうですか、ついに。おめでとうございます。」

「はい。ありがとうございます。神父様には小さいときからとってもお世話になって。本当に感謝してます。」

「お礼を言うのはこちらもですよ。長い間、欠かさず、勉強と手伝いをしてくれてありがとうございました。」

「お礼だなんて。手伝いも、魔法を教えてもらってるお礼でやってただけですから。」

「それはわかってます。ですが何より、マリーと楽しい時間を共有できたことに感謝しているのですよ。」

「神父様。」

泣かないって決めたのに、泣きそうになる。
私は涙をぐっとこらえた。

「それに、旅に出るにはちょうど良いタイミングだと思います。」

「え、なんでですか?」

「そろそろマリーに伝えようと思っていたのですが、私がマリーの技術を上げてあげられるのも、限界が近づいてきました。なので、学校へ行くことを提案してみようと思っていたのです。」

「学校。」

「はい。ですがあくまで、マリーがより技術を磨きたければの話です。それに精霊については、私は何もしてあげられませんから。」

「でも、私旅に出たいんです。」

「わかってますよ。つまり、一度外の世界で、他の魔法使いにあってみてほしいのです。」

「他の魔法使い。」

「マリーは、人並みに魔法が出来ます。そしてこれからも伸びる可能性を私は感じています。だからこそ、より高いレベルを教えられる人に出会ってほしいのです。そして、その過程は重要ではありません。マリーが目指したいものを目指すために、大きな世界に出ることを、私は心から嬉しく思います。」

「神父様。私、精霊士になりたいんです。だから、旅に出て、師匠を見つけてきます!絶対!」

「はい。応援していますね。」

私は、カップのお茶を、一気に流し込む。

「じゃあ神父様、他の人にも伝えてくるので、これで失礼します。」

私は、深く頭を下げるとすぐ振り向き、教会を後にする。
あのままじゃ、たぶん、神父様の前で号泣してた。
歩きながら心を整え、私は酒場へと向かった。


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